長い年月をかけて作られた全集なので、全部が均一ではありませんが、 この価格を抜きにしてもクオリティの高い全集だと思います。 特にフィラデルフィア管弦楽団との10番・11番はすごい。 炎が燃え上がるような演奏となっています。 一番有名な5番がウィーンフィルとなっていますが、 これはどうかな?と思うものもあります。 フィラデルフィア管はチョン・ミュンフンと4番を録音していますが、 ある意味シカゴ響と並ぶ言わずと知れたアメリカの超一流オケですので もっとCDのリリースをして欲しいと思います。
ショスタコーヴィチの死後、この本が出たことによって、彼に対する見方が随分と変わったという。権力とどう付き合ったか、そして曲にどんな意味が秘められていたのか、実に興味深い内容であることには間違いない。 ただし、このヴォルコフの証言、ショスタコーヴィチの遺族は認めなかった(無論彼らもソ連体制下にあったわけだが)、またヴォルコフがこれをアメリカで発表したこともなんらかの政治的な意図があったと考えられる点などから、全てがショスタコーヴィチの発言であるということは断定できない。贋作であるという説もあり、論争になったが、現時点では「全てが正しい訳ではないが、嘘八百というわけでもない」というのが学界の見方だ。 そんなわけで、全てを鵜呑みにしないで読んでほしい本であるということは言える。むしろ、物語やシミュレーション、推理の本であると考えてもいいかもしれない。そう読んでいるうちはそれほど害はないだろう。実はなかなか読ませるというところが強みだったりする。
ムラヴィンスキーの貴重な映像であるが、映像にはノイズも多く音声もモノラルである。しかし、そのような事は見始めてから1分で気にならなくなる。それほどムラヴィンスキーのカリスマ性は素晴らしい。 あの目で睨まれたら、奏者はビビッてしまうこと間違いなし。ただし、ほんの一瞬浮かべる笑顔に人間らしさもうかがえ、「ひょっとしたらこのおじさん、優しい人なのかも。」と思ってしまう。 以前、LDでチャイコの5番(ゲネプロ?)がでていたが、このDVDに収められているのは別映像のコンサートのライブである。時々、会場の無意味な長写しなどあり意味不明な点がご愛嬌。
偽書の説が有力ということもあり躊躇しておったのですが知り合いとの雑談を契機に購入。偽書か否かはさておき、当時ショスタコが置かれていた状況についての切迫感はあって、やはり彼を語るときには必読の書なんでしょうね。満足しました。ショスタコはある意味政権のプレッシャーが「吉」と出たというか、政権が無茶を言ってプロパガンダの世界に引き留めようとした「お陰」で万人に「分かる」芸術家として、彼岸に飛んでいかずにこっちの世界に止まってくれた人ではないかと思うのですが、その感じで読むとまた一層面白し。
何度よんでもとても参考になる本です。いま思うと本文の中に、発行当時誰もその存在を知らなかった、10年後の1989年に初めて初演された「反形式主義的ラヨーク」の関する記述があることです。英語版概説(日本未訳)には、それが、「スターリンと取り巻きを茶化した声楽曲で、公表も演奏もされたことがない」ことが明記されていました。まだまだ発見があると思われます。偽書とかいろいろ議論する人がいますが、こういった基本的な文献にあたるという点を忘れた議論が多いこと を注意すべきかもしれません。 たとえばこの本で「ユダヤ音楽の二層」「泣き笑い」というあたりにかかれていたことを「二重言語」と翻案したり、 交響曲第7番がダビデの詩編から発想されたという記述、弦楽四重奏曲第8番が「自伝的」でその引用は・・・この「ショスタコーヴィチの証言」に初出していたものです。 第7番の戦争の主題とレハールの関係も「証言」の編者のソロモン・ヴォルコフが79年の概説の注釈で述べていたところですね。。総じてこの、「証言」の結論見方に極めて近いないし事実上引用してる意見の元ネタがこの本であることをはっきりさせていないケースがかなりあるように思います。 しかも偽書論争で2004年に原稿のコピーを手に入れて、署名がコピペで・・とのべて偽書論争にとどめを刺したと一部に評価されているフェイは、この本が出された2005年に、この「ショスタコーヴィチの証言」が偽書かどうかわからんという前提の「ショスタコーヴィチ ある生涯、改定新版」の邦訳、英語版を出版しています。
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