芥川賞作家、長嶋有の小説15作品を15人の漫画家が漫画化するという企画本。 藤子不二雄Aが表紙を描いていてそこが手に取りにくかったですが、他漫画家へのオファーをする際に役に立った”藤子先生も参加の安心企画!”というのだからこれはこれで良かったのでしょう。
作家陣は大御所・萩尾望都から昨年デビューの新人オカヤイズミまでバラエティに富んでおり、雑誌のような幅広さがあります。贅沢な”アックス”みたいな感じでしょうか。ただ普通の雑誌であればそのバリエーションゆえに「どうでもいいマンガ」、「好みじゃないマンガ」が散見されるのですが、今回の企画についてはすべてマンガ原作者が同じであるのでここに一定のクオリティというか方向性というかテイストが明確に決まっています。これにより大変読みやすく、400頁を超える分厚いこの本を大変楽しく読むことができました。
また、全マンガ作品について原作解説、マンガ解説、漫画家紹介がしっかり書かれていて、コラボ裏話やこの漫画家初めて読んだけど他にはどんなの描いているのかな?といった読者が読後に感じるであろう興味の部分についても丁寧にフォローされています。長嶋さんの原作力、編集力、サービス精神は大変素晴らしいです。
大変満足度の高い作品でした。掲載漫画家の2-3人を知っている人なら、買って損することはまずないと思います。おすすめ。
いろいろ入ってお得感もある、よしもと氏のベスト版。 よしもとよしともの漫画には、いい意味で起伏がない。 無理矢理感動を呼び起こすなんてことは、ないのだ。 ただ静かに、滲み出てくる。「青い車」を読んだことがある方なら 如実に分かるだろう。 これは「読みとる」漫画ではなく「感じる」漫画なのだ。
赤い表紙の奈良美智さんのイラスト集。 黄色い表紙の吉本ばななさんの小説。 この2冊が空色のBOXに入った贅沢な装丁の本です。 先日、ばななさんがあるテレビ番組に出演した際に「自分の作品の中でいちばん好きなのはひな菊の人生」といっていました。 それが、私がこの本を手にするきっかけでした。 食べ物(今回の作品では焼きそば)がとってもおいしそうに描かれているのはばななさんの作品の特徴。 その魅力は相変わらず。 母の死、幼い頃に離れ離れになった親友・ダリアへの想い・・・。 主人公のひな菊は毎日ただ焼きそばを焼き続ける平凡な生活を送りつつ、心にはどうしようもない「喪失感」を抱えている。 それをどう乗り越えるか、それともそれを同居しながらどう生きていくか・・・喪失との静かな戦い。 読むだけでじんわりとあったかい生きる活力をもらえる本。 それは決して押し付けがましくはない。 ばななさんらしく、優しかったです。
人が時間の流れに乗っているのか。人が時間に流されているのか。
例えば自分に何か大きな絶望が襲ってきて、それを受け入れても、
受け入れなくても、ただ着々と進んでいく日常。
退屈だと言う人もいるが、目を凝らしていみればいろんな物が転がっている。
好き嫌いが分かれる作品だと思う。
けれど、好きか、嫌いか。を考えさせるだけでもこの漫画は成功している。
作者本人の指摘で贋作が2点紛れ込んでいることが判明し、回収・絶版になる可能性ありです。
問題の2点以外は素晴らしい作品集ですので、贋作が我慢できるなら損した感は無いと思います。
けど修正された改定版が出るかもしれないし、まだ買ってない方は迷い所ですね・・・
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