故手塚治虫氏が、自身の曽祖父良庵を描いたことで話題になった原作漫画ですが、 原作においても、その良庵以上に魅力たっぷりであった親友、伊武谷万二郎が、 このTVドラマではさらに存在感を増しています。
万二郎を演じるのは、気鋭の若手、市原隼人さんですが、 これが空前絶後のハマリ役。大変な名演。 つかみかけた幸せが、運命のいたずらで次々とてのひらからこぼれ落ちていってしまう悲劇的青年を、 ため息の出そうな繊細さで演じておられます。
同じ男が思わずホレる硬派のきらめきの一方で、 好きな女性を前にしてしどろもどろになるシーンの、まあ可愛いこと。 TVドラマでこんな魅力的なキャラクターに出会うことって、ほんとに稀です。 見ているうちに万二郎にどんどん感情移入していきますから、 彼がつらい目に逢う時は、こちらもつらくてたまらず、 クライマックスで、家庭の幸福を振り切って、彼が死地へと赴いていく場面では、 行くな、行くな、バカ〜!!!と、画面に向かって絶叫したくなります。
リアルタイムの放送時に、本作はほとんど話題になることはありませんでした。 確かに、予算の関係上、キャスティングやセットが非常にショボく感じられるところもありますし、 全12話という尺では、原作に詰め込まれた豊饒なもの全てを再現しきれなかったのも事実です。
ですが、市原さん演じる万二郎には、そのような欠点を帳消しにする魅力があると思います。 少なくとも私に関しては、それまでたいして関心のなかった市原隼人という俳優さんのイメージが一変するほどのインパクトがありました。
TVドラマでは時々、こんな優れた作品がどうして?ということが起こりますが、 この「陽だまりの樹」など、その典型ではないでしょうか。 NHKは、作品の出来に自信を持って、このドラマがもっと多くの視聴者の目に触れるよう努力を続けていくべきだと思いますし、 放送を見逃した方は、DVDが発売されるこの機会に、是非一度視聴を試みていただきたく思います。 これは、稀に見る青春ストーリーの佳品です。
ビックコミックに連載された手塚治虫後期作品のアニメ. 幕末を描く作品には武士や革新的な人々を描くことが多いが, 陽だまりの樹では手塚治虫自身の曾祖父で蘭方医の手塚良庵という実在の人物の視点から幕末を捉えることで,明治維新への変遷を中立的な立場から捉えているところが大変おもしろい
時代の波とは言い難いが、日本史の雲行きを暗示するかのようなコレラの流行があり、蘭方医学はみとめられたが、将軍家定の死により政権は交代する。井伊に依る独裁政権である。 この歴史のうねりに、またしても良庵や万次郎は翻弄されるようになるのである。
ビックコミックに連載された手塚治虫後期作品のアニメ. 幕末を描く作品には武士や革新的な人々を描くことが多いが, 陽だまりの樹では手塚治虫自身の曾祖父で蘭方医の手塚良庵という実在の人物の視点から幕末を捉えることで,明治維新への変遷を中立的な立場から捉えているところが大変おもしろい
幕末から明治維新へというまさに日本の激動を美しいピアノで表現した とてもすばらしいアルバムです. ジャズに新風を吹き込む松居慶子によって作られたこのサウンドトラックはジャズに「和」を取り入れ,松居慶子さんの作品の中では異色でありながら傑作作品だと思います. アニメのサントラという枠を超えたすばらしいアルバムです. アニメをみていない方もこの美しいジャズピアノの音色を是非体感してください.
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