北海道放送で80年代に放送され好評を博したドキュメンタリーで, 知床で暮らす4人の家族の様を、小学一年生のみゆきちゃんを中心に描いたもの。
リアル「大草原の小さな家」、リアル「ハイジ」、リアル「北の国から」とも言うべき作品である。
ネットで検索すると相当有名な作品らしく、他の人感想もたくさん読むことができた。 「これがあれば倉本聡はいらない」という感想もあったが、それはどうか。 「五郎さん」は怖かったが、垂目で愛嬌があった。 このお父さんはとにかく顔が怖い。 ヒゲぼうぼうにめがね。めがねの奥の目が白い・・・・・。
みゆきちゃんは小学校まで徒歩で1時間半かかる。 雪が積もると3時間かかることも。 国道に出ればバスに乗れるのだが、お父さんは大草原の中みゆきちゃんを歩いて通学させる。 おなかぐらいまで積もった雪を漕いで、悪戦苦闘するみゆきちゃん。
これ・・死ぬんじゃ・・・・。
担任の先生が言いにくそうに「クマが・・・」、「吹雪が・・・」と「とうちゃん」を説得するが、 「とうちゃん」は自分も子供のころ歩いたというばかり。
ちなみにこの担任の先生も、ごま塩の五分刈りに薄いグラサン。 少なくとも小学校の先生には見えない。 東京でこの人が小学生と歩いていたら職務質問必至である。
映像では一見、朗らかな談笑風景だが、 この二人であるからパワーバランスが均衡して、朗らかな風になるのである。 (この先生は同じ北海道出身、橋本聖子氏のお父さんにも似ていた。 ちなみにこのお父さんは橋本氏を首に縄をつないで庭の池に放り込んでしつけたそうだ。 北海道の子育てはスケールが違う…。 北海道のお父さんのデフォルトはこんな感じなのだろうか(笑))
みゆきちゃんは仕事を一人前に手伝う。 わらを運ぶ機械(?)も運転するが、やっぱりそこは子供。 牛のお産がうれしくて、はしゃいでは「牛が気が散る」と、とうちゃんに平手打ちをくらう。
もちろんとうちゃんは間違っていない。 みゆきちゃんは立派な労働力なのであり、 果たすべき仕事とそれに伴う責任があるのだ。
思わず、なぜ発展途上国の子供たちは表情が厳しく、 先進国の子供は「子供らしい」表情をしているか、思いをはせ、考えた。
「オンジ」がいくら「ハイジ」をどなってもあれはアニメだった。 「五郎さん」がいくら「純くん」をなぐっても、あれはドラマだった。 しかしこれは現実である。 みゆきちゃんが現在成長してどのようになっているか心配になってネットを検索したら、 以下のような証言を見つけた。
「余談ですが、大きくなったみゆきちゃんは、現在も地元、標津町・薫別で颯爽と馬を乗りこなし、 牧場で黒毛和牛の生産に携わっているとのこと(^^)」
たくましく生きているようですね、安心しました。
あと、みゆきちゃんちはタヌキを犬のように鎖で犬小屋につないで買っていたが、 あれはいいのだろうか(笑) 西原理恵子氏によれば、 かって高知の人はペンギンをけっこう飼っていたそうだが、 それと似たようなものであろうか(笑)
何年も記憶に残る強烈なインパクト間違いなし。 おススメです!!
「3-11」の大地震にともなう大津波。被災者として直接体験していない多くの人もまた、すでに膨大な数の映像を見て津波という自然現象のすさまじさを、アタマとココロに刻みつけられた。
この映像視聴体験を踏まえたうえで本書を読むと、すでに明治29年(1896年)と昭和8年(1933年)におこった三陸海岸大津波において、今回2011年の大津波とほぼ同じことが起こっていたことを知ることができる。
とくに「明治29年の津波」。当時は、文字通り「陸の孤島」であった三陸地方の受けた津波の被害があまりにもナマナマしい。文字で追って読む内容と、今回の津波を映像で見た記憶が完全にオーバラップしてくる。
津波の犠牲者の多くは溺死したわけだが、溺死寸前で生還した体験者の語った内容を読むと、あまりものリアリティに、読んでいる自分自身が、水のなかでもがき苦しんでいる状態を想像してしまうくらいだ。これは、高台から撮影した映像からは、けっしてうかがい知ることのできない貴重な証言である。
文明がいくら進もうと、地震と津波は避けることができない。防潮堤すら越えてあっという間に押し寄せてくる津波。地震予知が進歩したと思ったのも幻想に過ぎなかったことがわかってしまった。いや、すでに1934年に寺田寅彦が書いているように、文明が進めば進むほど被害はかえって大きくなるということが、残念なことに今回もまた実証されてしまったのだ。
今回の大津波の生存者の証言も時間がたてば集められ、整理されることになると思うが、おそらく明治29年のときのものと大きな違いはないのかもしれない。本書じたい、いまから40年も前の出版だが、まったく古さを感じないのは、自然の猛威を前にしたら、たとえ文明が進もうが、人間などほんとうにちっぽけな存在に過ぎないことを再確認したことにある。
まだまだ、これからも読み続けられていくべき名著であることは間違いない。はじめて読んでみて強くそう感じた。
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