長い間完全に欧米中心の競技で、日本他アジアに向けられた冷たい視線、ある意味蔑視があったスポーツが、アジア中心の現状は正に「あっぱれ」だ。これまで求められたのは何よりも美しさであり、、その芸術性という曖昧さの部分に主観が入る採点競技だった。その風潮を一変させたヒロインは何と言っても伊藤みどり氏だ。当時旧東独の女王カタリナ・ビットは2種類のトリプルジャンプしかないが、圧倒的な美を表現すればよかった。しかし伊藤みどり選手は5種類のトリプルジャンプを持っていた。芸術性だけでは勝てない、高度な技の時代に移っていった。その伊藤選手と山田満知子コーチの話から始まっていく。フィギュアースケートは莫大な費用がかかる。Coachへの契約料・指導料、振付Choreographerのプログラム作成料、通訳、アシスタントコーチ、トレーナー、バレエにジム、リンク使用料、コスチュームにシューズ代、自分と関係者の遠征費と、気が遠くなる。コーチやスポンサーの支援、企業の強力バックアップ、大学のスケートリンクその他全てが揃わないと、日本の環境や競技人口の少ない国では奇跡だ。山田満知子氏の下での伊藤・恩田・中野・浅田という恵まれた選手達、中京大学(浅田姉妹・小塚・無良・安藤)、関西大学(高橋・織田・町田)のようなキャンパスのリンクなどは昔なら考えられなかった。田村明子著の「氷上の光と影」の後に読んだが、宇都宮氏の本書はやや部分的な記述に終わり、体系だった詳しい解説が足りず残念であった。文章も田村氏の方がうまい。ところで今振り返ると都内のリンクは劇的に失われた。1970年頃までに私が行っただけでも、古くは新宿歌舞伎町にもあり、代々木、千駄ヶ谷、後楽園、高田馬場、池袋、志村、王子、品川、晴海があった。今では東伏見、高田馬場、江戸川、千駄ヶ谷、23区外で東大和、川越、新横浜、東神奈川・・、これだけでは底辺は拡大しない、残念なことだ。首都圏にも大須のリンク、中京大・関大のリンクのような環境が欲しいものだ。
米で、何度もチャンプになり、実力もセンスも十分ありながら、なかなか、世界のタイトルを取れず苦労していた、ジョニー。 やっと世界Fの表彰台に乗れたが結果は3位。自身の試合でメンタル面での弱さを認めつつ、フィギュアと言う、政治的な面を持ち、矛盾を多く抱えたこのスポーツと言うか、彼にとっては、自身を表現する方法であろう、ジョニーはフィギュアをどうとらえていたのか。例え、一流であってもベストパフォーマンスをしたからとて、必ずしもそれに相応しい得点が出るとは限らない。自身のミスや責任とは関係ないところで採点、順位が決まる。ジョニーに対する評価は、低すぎるのではと不可解に感じた試合もある。 会場からのブーイングもあった。他選手との差も開いていたその試合後、彼は自分の演技を食い入るように見返していた。 そんなジョニーの表情が胸を打った。美の求道者など、日本では局がキャッチコピーをつけるが、彼は自分にしか出来ない高みを、スケートに対するこだわりをもって、そもそもフィギュアにおいて表現の意味する事とは何かを追求してきたと思う。矛盾も受け入れながら。それは、今でも変わらないだろう。
2008年末の全日本選手権、及びジュニアとノービス選手権大会のレポート。ありきたりでない取材力、インタビューアーの聞き取り能力。スポーツ記事にふさわしいスタンス。 全日本にかけた有名無名の選手達の気迫が最も感じられる季刊。シーズン直前に引退した太田由希奈選手の特集あり。
高橋選手だけでなく他の二人の写真やインタビューも量があり良いです。 コーチの話も興味深く読みました。 しかしこの著者はこの選手はこういう子!という思い込みが激しいのか、文章が少々気持が悪いです。 この人は普段から(HPコラムなど)スポーツライターとして疑問を感じる文章が多々あります。 言葉は綺麗にかざっていてもアスリートに対する敬意が足りないです。 インタビューと写真だけを楽しむ本ですね。
写真だけではなく選手へのインタビューも多い内容でした。 採点についても 不可思議な点数・4回転論争・北米VSロシア などについても書かれています。 購入してよかったです。
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