自分に死期が足音を立てて迫ってきたときにこんな言葉が残せる凄み。この人の生き様と死に様は、もはや「(私)小説家」でも「作家」でもなく、まさに「最後の昭和文士」であることに間違いない。
かつて京浜東北線の桜木町駅近辺から見えた「鬼御殿」は、夏になると屋上に提灯をつるし、赤い電球を点灯させたので普通のビアホールに見えた酔客が続々と足を運んでしまった、という伝説は、当時話題になったほどだった。「奢る平家」というわけでもないのだが、バブル経済の終焉、逆張りしても勝てない相場、持ち出し以上の金と手間を奪った将棋雑誌などさまざまな要因が絡み合って、借財を背負ったまま売りに出す以外の解決法は見つからなかった。
それでも惨めでも肩身が狭くもなく、人を引き寄せる魅力は、天性の才能なのか、それとも後天的な努力によるものなのだろうか?
生存中の人物評伝の難しさは、生存中の取材対象者との距離感なのだろうが、本作は完全に対象の懐に飛び込み、まさに「看取った」感まで醸し出す深さを上手に表現しているところがたいへん秀逸。「エロ」「SM」「官能」「アブノーマル」など一切の先入感をいったん排除して、一気に読み込まれることをオススメする。
将棋の羽生名人や谷川名人といったら知らない人はありませんが、本書の主人公村山聖は、2人とも下してしまったことのある天才です。 その勝負のスタイルは、自分の命を脅かす病に対して勝つための執念の闘いでした。そして、その必死の心から生じたひらめきで、誰も思いも付かない手を盤上に叩き付ける姿は、読者の心を確実に打つことでしょう。 弱い心や後ろ向きな考えに飲まれれば、たちまち将棋にも病気にも負けてしまうといった彼の置かれた状況を考えれば、健常者はなんと贅沢で自由に生きていることだろうと思います。 そんな彼の魅力に引き寄せられた彼の家族、師匠、好敵手や後輩など様々な人との交流も見事に描き出されていました。 彼は、短い生涯の中に棋譜というしっかりと生きた証を残し、羽生名人をはじめとする棋界の人々の心にその生命の存在感をたっぷりと刻み付けました。 重病人のはかなさでは無く、戦い抜く猛者の姿を本書の中に発見し、得るものがあったと思いました。
晩年の升田幸三自身のインタビューも交えながら、彼の半生を物語っています。 全4話構成です。
彼のファンであればとにかく買いでしょう。 ファンの人であれば、まずはこのDVDをみてから自伝書「名人に香車を引いた男」を読むと面白いと思います。 主要なエピソードは自伝書と重なっていますが、彼の語り方からどんな風にそれぞれのことを感じているのかがわかりますので、 その雰囲気を意識しながら読むと自伝書も面白さが倍増します。 型破り、破天荒な性格と自他共に認める人間であり、自ら自分はホラ吹きといいつつ、彼自身のこだわりも垣間見ることができます。
升田幸三とはだれぞや、と思う人は(今の世の中その気になれば、ググレば概略はすぐにわかってしまいますが)まずは自伝書から 読むと面白いかと思います。 自伝書を読むと、「この面白い人はいったいどんな風貌でどんな語り口だったのか」と気になると思います。 それでこのDVDを見るとまたまた面白さ倍増だと思います。
どちらにしても、内容はオーバーラップする部分もありますが自伝書とともに見ると彼をより深くしることができると思います。
「ディスカス〜」以来の大崎善生だった。「ディスカス」の時には、おいおいどこに行くんだ、大崎!自分の趣味の話しかい。とせつなくなったが、今回はパイロットフィッシュやアジアンタムブルーを彷彿させる極上の恋愛小説でせつなすぎる物語だ。 ドイツへの転勤を目前にした「僕」直人と広島に死を間近に迎えている父を持つ理沙。決定的な別れを二人は避けて、愛し合いながら離れ放れになっていく。 ドイツから何度も連絡を取っても音信不通となり、僕は闇に取り込まれていく。この何度も繰り返される「闇」のモチーフが素晴らしい。ステファニーというプラチナブロンドの恋人がすぐに出来てしまうあたりが、大崎らしいところだが、またこのステファニーが素敵すぎる。僕を取り巻く「闇」に少しずつ光を与え、その優しさに胸が苦しくなる。 しかし、三年半たって僕は日本に帰り、物語は劇的に展開していく。 人が人を想うということはどういうことなのだろう、そこにある「記憶」と現在の状況。ラストのまばゆくばかりに広がる海の光に、主人公が見る未来は決して物語の中の二人だけのものではあるまい。いやぁ〜しびれた。最高でした。今年上半期の一番です。
良いですねこの映画やっぱりセカッチューみたいになりますけど 音楽もまったりとした雰囲気も良いし 阿部寛さんもメチャクチャ良いです 時間を感じないし素敵でロマンチックで上品って言葉がピッタリの映画です
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