父親と牧場、そして最愛の恋人をも奪われ、失意の元に北海道を後にし、上京した柏木圭一郎。26年の歳月がたち、実業家として財をなした柏木は、彼からすべてを奪った江成への復讐劇を開始する。しかし、財をなすために犯した罪が、思わぬ形で追求をうけることになり、柏木自身も追いつめられていく。 2001年はじめに出版された本作品、話題を呼びベストセラーとなり、日本テレビ系列でドラマ化もされたが、年末のこのミスで15位、文春で20位と、評価は今ひとつであった。 しかしながら、私個人にとっては、「模倣犯」「邪魔」に続くベスト3であった。 なにぶんにも量が多く、一気に読むというわけにはいかないが、復讐劇に恋愛劇も絡まり、ページをめくる手が止められなくなる。 本作品のポイントは「血のつながり」と「タイミング」である。ほんの小さなタイミングのずれが、いくつか重なると、人生は周りの人をも引き込んで、予想し得ない方向に進んでいく。そして、天国への階段を誰と上ることになるのだろうか? 上巻では、柏木の復讐劇が始まる一方で、思いがけない血のつながりが明らかになってくる。
レッド・ツェッペリンはその影響力と楽曲の素晴らしさ、さらにファンのコアさから「最高傑作」議論には終わりがない感じがあります。 そこであえて私見を述べるなら、やはり一般的に言われているのと同じように、スタジオ盤ではこのアルバムが最高傑作になるのではないでしょうか? 1stから続く恐ろしいまでのグルーヴ感を残しつつ、すさまじいまでの楽曲を一枚のアルバムに閉じ込めているのは、さすがに稀代のロックバンドという感じ。 全曲素晴らしいですが、やはり「Black Dog」「Rock N' Roll」……そして、もはやロックにおける永遠のスタンダードとなっている「Stairway To Heaven」はお勧めでしょう。
実は、10代の頃にこのアルバムを聴いたときは「意味がわからない」という印象でした。 悪いというのではなく、良い悪いの尺度を持ち合わせていないのでどちらの評価もできないというのが素直な感想でした。 こんな音楽をやってくれる邦楽アーティスト(洋楽ならビッグバンドでいくつかありますが……)なんて、少なくともメジャーシーンにはいませんから、もう全くわからない。 「Rock N' Roll」はまだしも「Stairway To Heaven」なんてただたるいだけのように思えて、まるでクラッシュみたいに斜に構えていた時期もありました。 今ではそんなこともなく、この大作の「聴き方」はすっかり骨身に沁みているので、自分の欲求からこの曲を再生することも多いです。 ですから、若い方で「?」と思った方もどうか一聴で判断しないでください。 なにせウン十年も前の音楽ですから、「聴き方」がわからないのは当然ですよ。 でも、わかったらきっとやみつきです。
(上巻のレビューの続き) 中巻はストーリー展開ももちろんだが、心の揺れの描写が秀逸である。孤独と絶望の淵に追いつめられて復讐を誓った柏木でも、愛情や憎悪を自由にひねり出すことは出来ない。もし彼が、冷酷非情に徹することが出来たのなら、この作品は単なる復習譚に終わっていただろう。しかし、柏木の復習劇は、当初描いていたのとは違う方向に向かっていく。一方で、執念の捜査を続けていた桑田は、事件の全貌をほぼ掴む。また、亜木子の抱えていた重大な秘密も明らかになり、先を読まずにいられなくなる展開が連続する中巻である。 (下巻のレビューに続く)
DVDで一気に全話見たが、登場人物のそれぞれが重いものを背負った近年珍しいシリアスドラマ。それぞれのストーリーが丁寧に作り込まれていて見応えは充分、テレビドラマというより長編映画を見ているような印象を受ける。 俳優陣もすばらしく、佐藤浩市の奥の深い厚みのある演技は勿論のこと、個性豊かなキャラクターのなかにあってひときわ異彩を放つ津川雅彦、大塚寧々の寂しい女ぶりも実に切ない。新人の宮本真希も鮮烈だ。が、なんといっても個人的には加藤雅也の「児玉専務」萌えなんである。柏木の右腕としてストイックな辣腕ビジネスマンでありながら隠すに隠せぬ裏の顔。柏木のために人知れず自らの手を汚すときの、端正な顔が修羅と化すその一瞬。派手な流血場面がないぶんむしろ眼差しに宿る凄みが尋常でない。衣装ひとつとっても、一見地味なスーツに見えてシルエットがやっぱりクロウトだったり、さりげにゴツいシルバーのリングが指に光っていたりで裏の社会を歩いてきた男を匂わせる演出は心憎い。9話目で、ひとり死地に赴く前に柏木に煙草を貰い極上の笑顔を見せ、しかるのち背筋をのばして出てゆく姿はヤクザ映画の王道だったりするが、ツボを心得た演出はさすが。(しっかしありえねーあんな専務、のツッコミはこの際なし)奈緒子との絡みでも抑えた切ない表情が胸を衝く。 演じる加藤雅也の言葉通り「記憶に残るドラマ」になってしまった。 惜しむらくは、テーマソングとも言うべきツェッペリンの「天国への階段」が著作権問題か使用されず、DVDではクラシックに変えられていたことだ。 「モルダウ」は大仰だし、「くるみ割り人形」はあわないと思うなぁ。。。 なので1コ減点で星よっつ。
人それぞれの思い。その思いがうまくかみ合わないとき、悲劇が起こる。人はなぜ人を傷つけながらではないと生きていけないのか。傷つけられたと思って生きてきた圭一も、自分の気づかないところで、多くの人を傷つけていたことを思い知る。亜木子への憎しみも、亜木子を忘れずにずっと愛し続けていきたいと思う気持ちの、裏返しに過ぎなかった。そのことに気づいた圭一の最後に取った行動は、読む人の胸を打つ。とても読み応えのある作品だった。
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