今でこそ企業小説は沢山出ており1つのジャンルと言って 良いと思いますが、本書はそのジャンルを作った先駆けです。
1960年代の自動車業界を舞台にした、企業間のスパイ合戦、 妨害工作をサラリーマンの視点から描いています。
当時の時代背景(主な自動車会社や、庶民にとっての自家 用車の持つ意味)を知っていた方がより楽しめることは間違 いありません。
ただ、未だに再販されていることで分かるように本書はそ れらを知らなくても十分楽しめますし、本書を読むことによ り当時の時代を感じることができます。
本書で取り上げられている手法が現代では通用しない等と いう批評は的外れです。
千円を越す値段は高いと思いますが、読む価値はあります。
私は特に『族譜』のパートが心に残りました。創氏改名を取り巻く状況がどのようなものであったかを、リアルに伝えてくれる著作だと思いました。
現代では、日韓関係における歴史認識問題や過去への反省といった類が叫ばれます。ですが私はそういったアプローチではなく、まず人として、この人道的責任をどう考えるか、それがこれからの我々には大切なことなのかな、と思いました。
この本は単純に「日本が悪い」とか、「責任がある」とかを述べているのではなく、もっと深い悲しみと悔恨の念が渦巻いています。まずはそういった感情から、過去の歴史を紐解いていく必要性があると思うのです。
そういう意味で、本書は非常に素晴らしいと私は思っています。
169頁に「人の牛蒡で法事をする」という例えがでてくるが、これには頭をひねった。
著者は昭和5年(1930)に生れ、45歳で亡くなってしまう、駆け足人生の作家。 広島育ちなので、ひょっとしたら被爆者なのかとおもったがちょっとはっきりしない。
スチュアーデス(そのままの表記です)殺しや、私立大学の教授による教え子殺人並びに その死、など。実際に起きた事件をアレンジし、非常に面白い読み物に仕立て上げている 著者の手腕に感激する。
また、笠井氏すなわち「男爵」の本業である古書屋のスケールの大きな、世界をまたにかけたハナシ。 スケールが大きすぎて、作り話半分、創作半分とかんがえても、まさに小説より奇なり、 といったところ。
また目次がマージャンの上がり手6種、一例 色模様一気通貫 になっていて、へぇ〜の世界である。
著者自らが主人公となっていて、土木技師だったお父上の、伊豆の土地を見立てる話、 父急逝後、その手による庭の獅子おどしの「哀しい」音を聴くのが嫌で、伊豆をやめて京都に同行した 話など、ワタクシごともまぜあわせた、なかなか情趣深い、それでいて、ホントウに 読みやすい文章で、今は彼に相当する人はいないな〜と感じ入った次第。 もしご存命なら80歳になられる。 あ〜あ、時の経つのは早い。
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