まるい、穏やかで優しい歌声。曲はどれも3分程度で、コードも構成も単純。だから、一聴すると非常に地味です。でも、繰り返し聴くほどによくなります。 デビュー当時すでに結婚し10歳の子供がいて郵便配達をして生計をたてていた、と聞いて納得しましたが、彼の書く歌詞はどれもごくふつうの家庭人の視線から書かれています。だから、自分の世界と重なり合い、非常に親近感が沸きます。 個人的に好きなのは、ノスタルジックに子供時代とその頃の知人を歌った"Galbraith Street"と、自分の子供について歌った"Speaking With The Angel"です。 辛口のElvis Costelloが「この先20年聴けるアルバム」「友達たちのためにも買ってあげたら」とこのアルバムを絶賛し、自分のコンサートのオープニング・アクトにロンを選んだのも納得!の大名盤です。
カナダのシンガー・ソング・ライターRon Sexsmithの新譜は盟友Mitchell Froomが久しぶりにプロデュース、初期を彷彿させるシンプルで柔らかいフォークポップなSSWアルバムに仕上がっている。 アコギ、ベース、ドラムスの編成に、ストリングスやホーンをほんのり色付けしたスムースな作風で素晴らしい。 前作のポップでカラフルでキャッチーなアルバムも大好きだったし、こういった「らしい」作風もやはり心奪われる。 かなりパーソナルでナイーヴな印象を受ける内容だが、聴こえてくるメロディやRonの歌声はリスナーを温かく大きく包み込むような感覚であり、Ron Sexsmithだからこそ。 優しく誠実で素朴でいて、滑らかなフォークポップアルバム。 名作。
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