シドのファンとしても、初めて観る映像が多く、非常に興味深かった。
まさしく天才シド・バレットなしには、ピンクフロイドは存在しなかったろう。
またシドの奇行に手を焼きつつ、支援の継続を決め、そのアイデアを独特に発展させ、結果的に「プログレッシブ・ロック」を超越した化け物バンドになってしまった、メンバー達の心労や、受けた組しがたい公的圧力、孤独感は私の想像を遥かに超えているだろう。
残されたメンバーがシドの遺産を受け継ぎ、いつまでも変わらぬリスペクトを送り続けたのは、決して単なる金銭や仲間への友愛といったものだけに還元できるものではなく、普遍的な、人間が抱える苦悩や人生にまつわるネガティヴな問題を、彼らが身を挺して真摯にそのまま受け止めたからだと感じる。
そうした流れからいえば、彼らが後に「狂気」や「ザ・ウォール」という極めて重いテーマの作品を生み出したのは、歴史的必然かもしれない・・・。
私がピンクフロイドについて、常々感じるには、「神経質なサウンド作り」とか「メッセージ」とかいった表層的な事象ではなく、世界に対する根源的な<感じ方>や<受け止め方>である。
バンドは、天才的アウトサイダーの発信したある種奇怪な世界ヴィジョンをベース(突破口)に、バンド・コンセプトを一部カルトから群集の中のマイノリティ(少数派)に移し変え、高度化複雑化する組織の中での疎外感や生きにくさを歌うことで、広く人々の共感を獲得し、文字通り大衆的な大成功を納めた。
しかしこれが彼らを結果的に、より深い人間不信に陥らせたのは、なんとも皮肉な話ではないか。
むかしむかし、ビートルズを聴いたあとでピンク・フロイドの1枚めを教えられて そのアルバムをひどく気に入った私は (今から考えると当たり前だ。ビートルズ・イディオムに満ち満ちている。的確に そのアルバムを教えた人間の方が偉かった。井上君ありがとう。) 当然その次、この人の抜けたピンク・フロイドには行かずにこのアルバムに来た。 そして、まったく理解できなかった。 ピンク・フロイド1枚めの「サウンド・ペインティング」と本人が呼んでいたとい う(後で知った名称)音を塗り重ねて塗り重ねて、の音からすれば、これはまた、 急転直下のアコギ一本(ジャカジャカと言うほど、力がないから)ペカペカに時々 つんのめるドラムにキーボード。 なんだこれ? と、人間はおのれの理解を超えたものは単にわからないだけである。 何の判断も出てこなかった。そして、私は不可解を心に抱いたまま、LPを所持し 続けていただけであった。 本作、薬による幻覚体験を音にしたものではない。 薬のやりすぎによって何かを音で表現する能力を失った人間が残した(たぶんは) ピンク・フロイドに使われなかった残骸(ちゃんとした曲にはなってますが)にす ぎない。 この当時の彼はもはや薬をやってない時でも意識が持続しなくなっていて、同じ曲 をくりかえすことができなくなっていた(ピンク・フロイド放逐前のシド・バレッ トについてのロジャー・ウォータースの証言、および放逐されてからの彼のステー ジでも毎回コードがわからなくなって、途中で演奏をやめていることから推測。 近年の才能で言えばやはり薬におぼれるしかなかった(かわいそうな)エリオット ・スミスの演奏が、これは近年のことなのでネット上で画像付きで確認できる。彼 も若くして死んだ)。 バック・ミュージシャンをつとめた旧知のソフト・マシーンの証言によれば、本作、 リハーサルのない一発録り(!?)だった。道理で途中でバックがつんのめるはず だ。 それでも、(シド・バレットの伝説はいまだにカリスマを発揮しつづけていて、私 の耳が曇ってないとは言い切れないけれども)本作に収められた曲の中には、こん なアコギペカペカの歌なのに、さすがにキャッチーな曲があると思うし、総体的に は、こちらに訴えかけてくるものを持っていると思う。歌曲として耳をひきつける 何かいいものを持っている曲がある(さすがにBBCの製作だけあって、DVD 「ピンク・フロイド アンド シド・バレット ストーリー」で挿入歌として使われ ている部分はすべて印象的) 。そして、これらの曲にはサウンドをペイントする よりこうした一発録りの裸の素材のままの方が魅力的かも知れないと思わせるよう な曲集ではある。 EMIが発売を認めなかった「ヴェジタブル・マン」のパンクを通過してアンプラ グドのオーガニック・フォークにまで70年代初頭に行っていた、などという太鼓持 ちもやってできないことはないが、むなしいだけだ。しかし、彼の口癖は「バンド のみんなは遅すぎる」だったそうだ。
代表曲やいけないCDでしか聴けなかったレアトラックが、バランスよく選曲されています。ソロの曲はPink Floyd時代と比べて極端に音数が少ない印象でしたが、リミックスとリマスターのせいか、違和感なく楽しめます。 Pink Floydのフロントマンとして、突如シーンから消えた伝説の人として、カリスマ的な存在のSyd Barret、その本当と「幻夢」を知るには格好の入門盤です。
ダイヤモンドのブリリアント・カットは58面体。アルバムだけでは見えてこない彼の輝きを読んで堪能して下さい。 DVDも併せてみれば輝き倍増。
予想通り(笑)レコード・コレクターズで特集記事が掲載されていたので、書店で目撃した時には即買いでした。
表紙には若かりし頃のシド・バレット様が掲載されているではないですか。
有難い事です。ピンク・フロイドの1stを友人に勧められて聴いたのは大学1年くらいの頃で、確かカセット・テープで渡された音源です。
正直なところあのヘンテコにも思える音楽は、僕自身の音楽の観かた聴きかたを揺さぶるには十分な代物だったと記憶しております。
1stの異質さを期待してピンク・フロイドを聴くと、「あれっ?」というふうになり、有名な「狂気」「原子心母」等々を聴いていくうちに、1stとは明らかに違うバンドであると解ってしまうと、1stのヘンテコさを他に求めましたが何処にも無い音だと知った時にはがっかりしたものです。
シド・バレット様のソロは一枚持っていますが、何だか・・・よく解らないコトになっていたのでお蔵入りしてしまいました。
「マッド・キャップス」はまだ・・・聴けるのかな?(作品レビューを読んで思いました)
CDを持っていないので買おうかなとは考えています。
さすがに毎度の事ですが、この雑誌の作品レビューや詳細な記事には頭がさがります。
この充実した内容で1000円を切る価格は素晴らしいと思いますが・・・マニア向けかも?
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