妻に先立たれた父と一人娘の嫁入りという小津映画特有のシチュエーションで描かれます。 『秋刀魚の味』と設定は似ていますが、此方は一人娘です。 その一人娘を演じるのが原節子さん。お父さんは、笠智衆さんです。 父と娘の別れは、娘の嫁入りの日です。 娘は父と別れたくないので、縁談を遠のけています。 そこで父は一計を案じます。 娘を手放す父親の心境が深く伝わってきます。 小津映画ならではの繊細な味わいでしょう。
原節子さんの笑顔が素敵でした。 戦後すぐの東京の街並みや当時のファッション、風俗。 女性のおかれている立場なども興味深く感じられます。
笠智衆の味のある演技に感動させられました。宇野重吉とのやり取りもよかったです。親に見せたら亡くなった田舎の祖父を思い出したと言ってました。
何回目かの『東京物語』&原節子ブームの折に出版された写真集。1992年出版。
日本の俳優で誰が好きかと問われたら、少し悩んで女優なら原節子、男優なら笠智衆と答える。もちろん監督は小津安二郎が好きだ。
アイドル写真集でお馴染みの小沢忠恭氏撮影の写真集。美しい自然の中で笠智衆氏を捉えている。
出版当時はなんでこんなもの出すんだと思ったものだが、笠智衆氏の最晩年の姿が捉えられていて、笠智衆ファンだけでなく、原節子&小津安二郎ファンにももっと手に取ってもらいたい写真集である。
初期作品から代表作まで網羅されており小津の全貌が低価格で観られる好企画。映像や音声はそれなりだが、私の好きな「晩春」 と「お茶漬けの味」が入っているのがうれしい。監督は映画のことを「シャシン」と呼んでいたように基本的に静止画が繋がってゆく イメージなのだが、そこに最小限の動きが加わり、辛うじて映画の体裁を保つというストイックな世界だ。
それなのにこれだけ惹きつけられるのは、さらに無駄なく精錬されたセリフによって人情味あふれるテーマが浮かび上がって くる所からなのだ。このギャップが小津作品の魅力であろう。
エンタテインメント性や感覚的映像などで曖昧もしくはわかりにくくなってしまった現代の映画から見れば素朴なくらい明確に テーマが示されている。素っ気ないくらい歯切れの良い感情の交錯があるかと思えば、繰り返し念を押すようなセリフがあると いった具合にコントラストのある言葉の扱いがストーリーにドラマチックな起伏を与えている。
見上げるようなローアングルが生み出す画面と、たとえ喜劇的シーンであっても含蓄を忘れないセリフによって小津が目指した ものは高峰秀子が言うようにやはり能舞台の様な人間の尊厳と品性だったのだろうか。
小津映画と言えばこの人ありき・・・というぐらい必ず出演していた笠智衆さん。 彼の生い立ちから始まり、役者としての挫折、それを救った小津先生との出会い、そして別れまで多くが語られている。 当時の映画の撮影秘話など満載でとても楽しい。 いちばん驚いたのは「東京物語」のときの笠智衆さんはまだ49歳だったということだ。 本人はフケ役が多かったと言っているが、昔の役者はずいぶん我慢させられたようである。 また家族との生活、孫との暮らしなどなど写真も掲載されているのが嬉しい。 少しだけ笠智衆さんに近づけたような気がしました。 平成育ちの自分ですが、小津映画はどことなく懐かしい感じがします。 古き良き日本の縮図と言うか・・・私が知らない日本の姿が小津映画にはあるように思う。 そんな小津映画を支えた笠智衆の人生はずっと小津先生と共にあったと言っても過言ではない。 先生への感謝の気持ちも籠めて書かれたこの作品にはどことなく哀愁を感じる。 ぜひ読んでみてください。
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