1995年の段階から制作されていたこのアルバムは、U2やブラック・グレープのアルバムにも関わるダニー・セイバー、元ギャング・オブ・フォーのアンディ・ギルなどの強力なバック・アップを得て、INXSとは明らかに異なるバンドという枠を超越したフリー・フォームなサウンド・スタイルをバックに、これまでにないようなスケールを感じさせるヴォーカルを披露している。U2・ボノとのデュエット(トラック13.)やスティーヴィー・サラス(トラック7.)との共演、さらに元CLASHの故ジョー・ストラマー(トラック1.)と豪華なゲストを迎えて各曲共に素晴らしい作品に仕上がっている。マイケル独自のセンスで、スタンダードなロックを基盤に、R&B、ソウル、ファンク、ジャズ、レゲエなどの多ジャンルの音楽要素を匠に組み込んでいる。親友U2・ボノとのデュエット(トラック13.)は、間接的な共演であり、マイケルの死後、アンディ・ギルがボノに直接依頼し実現したものである。全体的にダークでクールな雰囲気と死を連想させるような切実な詞から、公では知られていないマイケルの繊細な実像と当時の苦悩が感じ取れる。このアルバムの制作当時、ボブ・ゲドルフとの親権争いとマスコミ(パパラッチ)問題などで自殺に追い込まれるほど心に深い傷を負いながら制作していた事を考えると、ファンとしてはせつなく感慨深いものがある。聴く度に、ソウルフルでスピリチュアルな魅力を存分に発揮するマイケルの歌声に惚れ惚れする反面、その内容があまりに素晴らしいだけに、聴く度に悲しみがこみ上げてくる。このアルバムは、タイトル通りマイケル・ハッチェンスそのものであり、如何にマイケルが才能豊かな素晴らしい男・アーティストだったかを教えてくれるロック史上、音楽史上に残る秀作である。この先、これ以上完成度の高い奇跡のアルバムに出会うことはないだろう・・・
このドキュメンタリーDVDは、故マイケル・ハッチェンスの軌跡を記した唯一の貴重作品です。終始、同じ画像の使い回しが目立ち、マイケルの素晴らしいライブパフォーマンスシーンが全く鑑賞出来ないのが非常に残念です。大ファンとしては、市販化されていない過去のライブ映像などを期待していました。また、INXSメンバーのインタビューも入れて欲しかったです。しかし、ケル・ハッチェンス(父親)などのインタビューなど、マイケルと生前交友のあった方々のインタビューを観るだけでも充分価値があるものになっています。マイケルのシンガー・フロントマンとしての評価は、賛否両論で、どちらかというと過小評価されています。いつかマイケルが再評価される事を切に願っています。余談ですが、数年前に、ハリウッドでマイケルの伝記映画が制作される予定でしたが、マイケルのご遺族から了解を得られず実現しませんでした。ちなみに、マイケル役の候補に挙がっていた俳優は、ジョニー・デップやエリック・バナでした。
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