およそクラシックギターのディスクは数あれどこのタルレガの名曲集は絶品だ!ギターテクニックの円熟さと芳醇な表現力に圧倒される。もちろんタルレガの曲はすべてが最高の傑作とは言い難い。どうしても涙、アルハンブラの2曲に注目しがちで、初めも自分はそうだったが、時を重ねる度に、その他の小品群の表現力の卓越さが分かってくる。大曲の終曲、演奏会用大ホタではスネア奏法が出てくるが、それを知らなかった自分は、長らくイエペスの横で誰かが小太鼓を叩いているものだと思っていた。聴きこめば聴きこむほどに、この愛しい曲の数々が輝きを増す素晴らしいディスクです。
複数の主人公がいる、という山田太一ドラマの始まりはこの辺りではないか、と思う。もちろんたくさんの登場人物それぞれに血肉を与える山田さんの手腕はもっと以前から発揮されているが、明確に主人公を2人以上に設定し、しかも「男女」ではなく同性たちのドラマ、という群像劇タイプの作風という意味でのほぼ源流。この系譜に属するのが、後の代表作『ふぞろいの林檎たち』だ。『想い出づくり』の放映が1981年で、ふぞろいが83年だから、まさに想い出〜がなければ、ふぞろい〜はなかっただろう。女性3人が主人公ということで、本作は恋愛模様がドラマの中心になっているが、ふぞろいになると男も女も複数の主人公がいて、恋愛、仕事、キャリア、家族なんかについてもがき、学び、断念し、折り合いをつけ、ともう少し複雑だったり突っ込んだ展開だったりする。女性たちを描いている、ということもあってか、どこか作者の眼差しはシビアだが優しい。書き手の彼女たちへの慈しみの思いが、回を重ねるごとに強くなっているようだ。というようなことは、ドラマで見るよりシナリオを読むほうがより伝わってくるのではないか。最後に起こる「事件」も、ハラハラさせられるけれど「きっと大丈夫」と思えてしまうのは、作者の眼差しを読み手が読み取ってしまうからだ(僕はそうでした)。主人公たちの家族も、それぞれに魅力がある。児玉清が演じた父親像、いいなあと思う。それとは対照的な父親像を演じた佐藤慶も、きっと素晴らしかったろう。母親では佐々木すみ江の演じた人物がいい。佐々木すみ江自身の存在感もあるのだろうが、このキャラクターはふぞろい〜の中井貴一の母親像としてさらに膨らんでいく。ドラマを見ていないのに、こんなふうに「役者の芝居も良かったに違いない」と思わせるのは、山田さんのシナリオの素晴らしさだ。
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