ストーリーには起伏があり,涙あり,友情あり,恋もあって面白く読める。
しかし,この本の主人公は一体「おれ」なのか「おばさん」なのか判然としない面がある。 そこに,先週の朝日新聞の書評欄にこの著者のインタビューが掲載されており,本作は,この著者の前作や将来作との連作となる予定とあり,本作は一連の作品の中の1ピースと考えると,納得がいく。
屠殺場というのはなかなか外部から見ることができない。特に、生きている牛が枝肉になるまでの具体的な作業の詳細をこのように科学的、客観的に自らの人生観も含めながら淡々と記述された文章は感動的であった。 写真は事情もあり添付されていないが、イラストは非常に味があった。 「こうして僕は猟師になった」 という本とも共通するが、獣を解体して肉として食べることは命をもらうことであり、自分が食べる食肉を大切に思う気持ちが強くなった。
「おれのおばさん」の続編。前作の主要登場人物の3人が語り手となり、それぞれの視点による3つの中短編から構成されています。前作の書評でも指摘されていましたが、本作品では語り手の内面描写にさらに重きがおかれ、そのために物語としては物足りなく感じました。けれども作者のメッセージには全面的に共感できます。本文から引用します。「ここではないどこかに理想的な世界があるわけではなく、人生にはこれを達成したらOKという基準もない。そうではなくて、今ここで一緒に暮らしている仲間たちのなかでどうふるまうかがすべてなのだ。」
本作品は主人公たちのさらなる成長への前奏という感じもして、どうしても続編が読みたくなりますが、この作家にはすでに「ぼくたちは大人になる」という、(境遇は異なりますが)別の高校生を主人公とした作品があり、これは物語性もすばらしく、私の一押しです。私事になりますが、私はこの作家とほぼ同年代なのですが、今後もこの作家の新作を読みながら、自分の子供と共に成長していければと思いました。
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