流通・サービス業界は製造業に比べ経営の科学化が遅れているとの定説を覆した良書である。実務を知らない外部からの類書は多いが、直接携わった人間の著作であり迫力が異なる。
絶え間ない業務改革、販売管理や単品管理などイトーヨーカドーか流通激戦を勝ち抜いてきたプロセスとその強さのエッセンスが凝縮されレポートされている。前著の「成長の源流」と合わせ業界のリーダーたる姿が報告されている。そして中国事業の展開は日本の新興国への日本の新しい市場の開拓の旗手として日本国民に与える恵は計り知れないものを感じる。企業秘密にギリギリ接する真に迫ったレポートは素晴らしい。
加えて日本のもの作りの科学的分析の大家である東京大学の藤本教授のコメントに注目したい。曰く「トヨタと基本的原理は同じである。」発展途上国の成長が凄まじく空洞化する流れの日本経済にとり日本の強さを再認識させてくれた本である。これらの日本的強さを武器に、また円高を武器に他国にマネをできない日本的なもの、たとえば文化、環境、食品農業などソフトパワーを駆使し世界に市場を作れる、雇用の場を作れるなど今後の日本も捨てたものではないと言う気にさせてくれる。
ただこれだけのレベルをもつ日本的な非製造業の先端企業が、もの作りの先端企業のトヨタと比較した場合の収益規模の大きさの違いは、国民の人間力を最大限に生かしてバランスの取れた日本経済を永続的に発展させるべきであると言う視点からは産業のあり方、企業の評価に歪みを考えさせる。イトーヨーカドーは桁違いの収益額を誇っていいではないか。もっと流通業・サービス業の力を日本経済の将来設計に活かしたいものである。
日本企業の持つ強さの真実を教えてくれる良書である。
経営環境が激変し、今どの企業も大きな変革を迫られている。業種にかかわらず、経営改革を目指す企業の経営者、経営幹部、スタッフにとっての必読の実践的経営書である。今、経営改革にどう取り組み、どう実践していけばよいかを考える上で大きなヒントを与えてくれる。
まず第一に、何故それを実施するのか、何故自社は存在するのか、何故自分は存在するのか等「考える経営」の大切さを徹底的に教えてくれる書である。 第二に、企業の強さの本質、強さの原理とは何か、特に質の経営を徹底して追及することの大切さ、そのための実践的なポイントを経営者の視点から問題提起してくれていることである。経営改革に取り組む企業にとって特に参考になる点である。 第三に、企業の成長段階に応じて強化すべき点、変革すべき点を示し、企業の成長戦略(或いは生き残り戦略)を考える上で重要な示唆を与えていることである。 特に重要なことは著者は長らく経営の第一線に携わってこられた経営者であり、経営者の視点から様々な実践的経営のヒント、奥義を提示されているところが他の経営書に無い大きな特徴であり、優れた点である。著者の関連図書も非常に参考になる。
イトーヨーカ堂と言えば『鈴木敏文』と繋がり,イトーヨーカ堂の事業拡張に奔走していた激動期の社長,伊藤雅俊氏を詳細に紹介する書籍は多いとは云えない.著者の逸見氏は,鈴木敏文氏の入社前からイトーヨーカ堂に入社しており,会社の事業拡張・成長を実体験から表記できる立場を最大限活用,この書籍でその軌跡を赤裸々に綴っている.小売業の発展の奇跡を知る上での歴史的価値は高く,読みごたえもあります.読んでいて,非常におもしろい.イトーヨーカ堂関係者の記述だけに,その内容の一部は美化されている可能性はあるが,疑問を感じる記述は決してない.イトーヨーカ堂を研究する上で貴重な書籍と言えるでしょう.
昨今のイトーヨーカ堂の成長が何故達成されたか,単品管理の発想がいつ生まれたか,銀行からの借入比率を何故低く抑えたか,などの起源を知ることができます.小生,イトーヨーカ堂のファン故に読みましたが,そうでない方も本書を読めばイトーヨーカ堂の経営理念を知ることができ,少なからず,応援したい気持ちになるかもしれません(十人十色ですが).
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