三谷幸喜らしいギャグがしっかりちりばめられているのもいいですが、今作は何よりトリックがすばらしい!普通、犯人がすでにわかっている倒叙推理のお約束を逆手に取ったこの手法、一見したあと「やりやがったな、三谷幸喜!」と思いました。私にとって、今作は、1stシーズンの「動く死体」、2ndシーズンの「動機の鑑定」、3rdシーズンの「再会」、スペシャル版の「黒岩博士の恐怖」と同じくらい思い入れのある作品です(犯人が全員初老の男性というのがたまらない)。あと、古畑が食べていた「食パンを焼いて、熱いうちにバニラアイスクリームのっけて蜂蜜かけて、チョコレートソースちょっとだけのっけた」やつ、そんなの私も食べてみたいと思いました(^O^)
1603年に徳川家康が征夷大将軍に任命され江戸に幕府を樹立してから1868年に江戸城が明治政府軍に明け渡されるまで265年も続いた「江戸時代」を、「封建時代」という言葉で画一的にとらえられて、中学校や高校の歴史の教科書に書かれている。 この3世紀にもわたった江戸時代を「封建時代」ということを前提として一括りで教えられていることに、著者の速水融氏が本書第一章で大いに疑問を呈している。 中学・高校という人間形成の最も大事な時期に受験対策だけを視野に入れた暗記するだけの不毛な歴史教育にたいして怒りとも思える発言をしていた。 本書を読み終わり、著者の危惧する意味が非常に理解できたのは、江戸時代の歴史について研究(それぞれ分野が違うが)している学者との対談が非常に面白かったからである。 どの対談を読んでいても江戸時代をいろんな切り口からとらえ語られていたから教科書的な画一的「優等生的回答」などみじんもなく、いままで自分が知っていた江戸時代観が多く修正され興味深かく読み終わったのである。 最近、「オランダ風説書―『鎖国』日本に語られた『世界』」(松方 冬子著)を私が読み終わって、ブックレビューに書評を投稿した内容も本書を読み終わってから的外れなことを書いていたように思ってしまった。江戸時代の「鎖国」は、本当の意味での鎖国ではなく、この日本の鎖国を世界的にとらえれば近世のフランスなども同じような政策をとっていたからフランスも鎖国国家と定義しなければならなくなると本書で知ったのである。 今後中学校や高校の歴史教科書を、著者のような考えで修正され改善されてゆけば歴史の授業がもっともっと面白く生徒が興味を持つようになってくるのではないかと痛感してしまった。 年号やなんかを丸暗記させながら教科書だけを頼りに惰性で授業をしている教師たちに、ぜひ本書を読ませたいと思うが、そんなダメ教師が本書を手に取ることがないのが日本の教育界の現状なのだろうと、言わずもがなの愚痴も言いたくなってしまった。 が、歴史を教える真面目な先生には絶対お勧めの一冊ですよ!
本書は三部構成であらすじならひとことにまとめることも可能であろう。しかし第二部の「庭」についての描写に関しては、恐らく読んだ者にしか伝えることは出来まい。ゾラは地方の植物学者であったのだろうかと勘繰るほど、植物や風景の色彩、生命の力強さや美しさを余すことなく文章におこすのが巧みだ。現代小説でこれほど迫るような筆をとれる方がいるだろうか。ゾラは小説を書くときには綿密な取材を行い、現代ではその取材ノートが風俗資料になって残されるほどだという(一度見てみたいなぁ)。文章から映像が見えてくる小説。しかも時代の違う異国の風景であってもだ。稀有な作家。生涯お付き合いしたいと思う。
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