私は昭和16年(1941)生まれ。昭和7年から18年頃にかけて、綺羅星のごとくいた名優たちの舞台をたくさん観てきた父から、感激した思い出を幼年時代からずっと聞かされて成長しました。その影響で高校生のころから、戦前の名優たちのレコード、ブロマイド、文献を今まで集め続けてきました。殊に十五代目市村羽左衛門のものはレコード、ブロマイドともに自慢できる量になっております。その後、先代の十一代目市川団十郎(今の海老蔵のお祖父ちゃん)の襲名興行での「勧進帳」など、私もその当時の芝居をかなり観てきました。それらの経験から、この記録映画をみますと、十一代目団十郎の弁慶は、この映画での、父・七代目幸四郎のものより優れていたようにも思いますが、時代の流れで当然のことながら、歌舞伎も少しずつ変質して来ているように感じます。そしてこのDVD。昭和18年という、太平洋戦争の真っただ中での歌舞伎座でのライヴ映像。よくぞ残しておいてくれた、と思います。伝説として語り継がれる名優たちが円熟の極みにある舞台は、やはり深い感動をもたらせてくれます。この当時、アメリカでは既に「風と共に去りぬ」などの総天然色の大作映画が出来ていたことに較べれば、モノクロで、カメラワークにも僅かに難点はありますが、真に貴重な、後世の規範となるものであり、少しでも興味をお持ちの方には、お勧めしたいと思います。
本書は幕末・明治に9代目團十郎とともに人々を熱狂させた5代目菊五郎がその最晩年に、自らを語った自伝である。私がかつて読んだ自伝の中では、その破天荒さにおいては、ほぼ彼と近い時期に生きた、勝海舟の父の勝小吉の自伝「夢酔独言」と並ぶ面白さである。 彼の痛快無比な経験が、まるで芝居を見るかのような生き生きとした江戸弁の描写で語られている。中でも、鉄砲玉の飛び交う上野の彰義隊の戦場に遭遇してしまった時の彼の機知に富んだ行動は、緊迫した状況であるのに何だかおかしく、そして「さすが役者!」とも思えて笑ってしまう。 また、歌舞伎愛好家にとっても彼の緻密で計算された舞台がその日常の生活の中でどのようにして生まれたのかが分かり、芸談としても楽しめる。粋でいなせな彼の写真もふんだんに掲載されているので、錦絵でしか見られないその舞台姿も想像できるだろう。 科学技術等がが進歩して近代化した今日、現代人がもはや経験しないことにより失ってしまった大切な何かを彼とその人生は教えてくれる気がする。
歌舞伎に興味があっても見たことない人、多いのでは? そんなあなたにおすすめがこの舞台。 なにしろ、いかにも歌舞伎って感じで、分かりやすくかつかっこいい。 歌舞伎は高いとおもっているかた、とりあえずこれを買って、入門編のかわりにしてはいかが。 大詰も派手で面白いので本当は、通し狂言でみたかったですね。 とはいえ、まずはこれぎり。
大正11(1922)年に録音された六代目尾上菊五郎(1885-1949)のSP盤がCDになりました。
ラッパ吹込みですから電気吹込みの盤に比べると少々音は悪いのですが、六代目菊五郎 や六代目大谷友右衛門の鮮やかな口跡はノイズの奥からもよく分かり、その素晴らしさに 圧倒されます。
解説書には全台詞書き起し、全配役掲載(一部不詳分あり)のほか、河竹登志夫氏による 六代目の思い出語りもあり大変充実しています。
「ベスト・オブ・正月」も持っていますが、曲のダブりも少ないので、ついでに?買っちゃいました。(演奏・選曲などの良し悪しについてコメントするだけの知識や教養は私にはありませんので、それらについてはソレナリの方のコメントをご覧下さい。)端的に言う=個人的好みで言うと、「ベスト・オブ・正月」よりもこっちの方が良い=好きかもしれません。 お正月にはぴったりの1枚です。逆に言えば、「お正月以外には・・・」ですけどね。でもその一方で、「邦楽への超入門書的な1枚=邦楽への興味・動機づけの1枚」と考えれば良いかもしれません。私自身はこの1枚を聞いてから、邦楽についてもちょっとは勉強しよう(日本人として最低限のことは"常識"として知っておくべきだ)と思いました。 また、外国の方へ「日本の民族音楽のCD」としてプレゼントするには最適かとも思います。
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