アマゾンの「堺屋氏・売れ行きランキング」でみても、この本は上位にランクされていないのが不思議なくらい良い本だ。
想うに2002年の刊行で、古くなったとでも言うのか。そんなことはない。
次の戌年の頃の日本の背景を、こんなにも分かりやすく、かつエキサイティングに描いている本はない。
たとえば「中山間地域で過疎化が進む、過疎になるから仕事もなくなる」の項では、全国どこでも社会資本の維持管理は問題だと指摘する。
今や(この2018年の頃)公共事業費の9割は、20世紀に造った道路や建物の維持管理費で消えている。多くの過疎地で持ちきれないとして、スーパー林道も公民館も、竹下さんからもらった一億円で作った温泉施設も、廃業にしてくれと「廃業陳情」が、霞ヶ関に続く…とある。
来るべき平成三十年(2018)には自分はいくつになるのか、息子は?娘は?と、自分自身のバックグラウンドを描いてみるに最適な本だ。
1980年刊の名著『団塊の世代』と、昨2005年刊の『団塊の世代「黄金の十年」が始まる』と併せて、「堺屋・近未来三部作」として読むことを勧めたい。
農本主義から重商主義への転換期という経済小説の要素が入った忠臣蔵です。そのため、仇討ち派の描写と並行して、仇討ちに参加せず、塩田開発に賭ける、石野七郎次(松平健)一派の描写もあります。 主役の大石内蔵助(緒方拳)は、狂言回しと言ってもよく、浪士の中では、不破数右衛門(小林薫)と片岡源五右衛門(郷ひろみ)の動きが大きな役割を果たし(また二人ともカッコイイ特に小林薫)、堀部安兵衛が完全に霞んでいます。 石野達は、塩田開発を続けるため武士である事を捨てざるを得なくなりますが、仇討ち成功後、不忠者として赤穂を追われます。大石と別れの際、大石から「多分、誰も間違っていない。」と立場や考えの違いを理解するセリフがあっただけにやりきれません。 バカ殿丸出しの徳川綱吉(竹脇無我)、天然ボケな町子(吉田日出子)、そんな二人の間で仕事をこなす柳沢吉保(岡本富士太)の描写や、ちょっとベタでくどかったけど、石野と竹島素良(多岐川裕美)、片岡と十文字屋おゆう(古手川祐子)、不破と竹屋美波(樋口可南子)ラブロマンスも彩りをそえてくれました。 難を言わせて貰うと、オープニング音楽は素晴らしいのに、画面は露光過多でクレジットが読み難い事です。
この本は、氏の「第3の敗戦」「緊急提言 日本を救う道」の延長線上にあるのだろう。250ページの新書にしては扱う範囲は広い。維新八策に沿っての記述か。新政権の方向が固まる前に、また今年の参院選前に、と云う時期・スピードを重視した出版かもしれない。 今回の選挙について著者は、民主惨敗・自民復活・第3局頭打ち、には民主と第3局を嫌う官僚(?)が絵を描いたと見る。「9つの真実の上に1つの嘘を積み重ね、全体の結論を誤った方向に導く」官僚の常套手段。つまり「今解散するのが民主に有利」と吹き込んで民主と第3局の伸長を阻止したと。ナルホドである。 氏の訴える改革の1丁目1番地はまず公務員制度改革、引き続いて中央集権打破(地域主権型道州制にすべき)と述べる。その土台を直さねば、教育・貿易・エネルギー・財政再建と社会保障の課題に当たるにも官僚に情報操作され後退あるのみ。改革の順序を間違えねば、明治維新が「改革の素人たち」でも成功できたように今回も成し遂げられるとする。
同じく官僚独裁を最大の弊害とし、「政治的説明責任中枢の不在」も日本の課題とするウォルフレン氏の分析も鋭いが、著者は「元当事者」として弊害を生み出すメカニズムを詳しく記している。 入省時にそこが「本籍」となり、出向を繰り返しても、出世は「仲間受け」即ち「本籍の省益!」であるから、仕事を増やし、当然予算を増やし部署を増やし・・という無駄使いは止まらない、と説く。 、、、確かに事務処理能力が高く計算能力の高い(縮めると、計算高い)官僚たちは、個々の能力は高く・個人の人格は異常ではない(だろう)にも拘らず、残念な事に今の日本で最も問題視、あるいは軽蔑される集団に成り下がっている。一方「お代官様を籠絡する越後屋」たちにも問題はある。これは人類普遍の課題であろうから、システムや法規の課題であろう。 厚生行政(本来は国民の命と生活を守る役所なのに)での大問題だけを見ても、薬害エイズ、C型肝炎、B型肝炎予防接種、アスベスト、AIJ投資顧問(投資のズブの素人が600人以上天下っていた事実は記憶に新しい)などなど、枚挙に暇が無い。理由は能力の有無という事ではなく、天下り先企業や業界団体、そこへの天下りOB達からの有形無形のプレッシャー(というより生殺与奪の縛り)で主に「不作為」による過失、隠蔽体質が国民の安全より彼らの利益を優先するからだと評者も思わざるを得ない。政官財癒着による、多少の不効率や甘い汁、というレベルではない、、 人ごとではない、あなたや私や、家族や子々孫々を含めた全国民の生活、健康、生命が顧みられていないのですよ!
鋭い指摘と提言は随所に見られる。 '1.公務員改革:明治維新にならい、まず版籍奉還(公務員改革)。現在の省庁別採用を改め、内閣一括採用にすれば省益に走らなくなる。そして政治主導を行い、内閣が官僚の働きを指示・評価する。又、時代の要請に応えられる様に、10年で2割ほど人員を入れ替え(外部と)、20年で4割ほど入れ替えると提案している。良く聞く話だが、東大の先輩が後輩をその省にスカウトする際「我が省では生涯賃金◯◯億だよ」と口説くそうである。当然天下りの給与と退職金も込みである。金目当ての人は居て欲しくない。私見では、大量の超過勤務は減らす方策を立て、廊下(?)トンビなどの慣行も止めるべきである。
'2.中央集権打破:戦後日本の税収は6割が国、4割が地方になっているが、それは所得税と法人税が国に入る制度だからであり、翻って、業務にかかる費用は地方が6割。その差額を地方交付金という紐付きの金で埋め、それによって地方を支配している。ぼったくりバーと同じで、「地方が注文もしない品物を出して分担金を請求し、明細も出さない」しくみもある。地方主権にすれば、その地域で本当に必要なものから順に予算を使う様になる。「ニア・イズ・ベター」(当事者裁量)しかない。
'3.教育:年代別人口差の為、教師の採用倍率は年度により2〜30倍もの開きがあり、かなりのバラツキや不適格者が生まれる。教師の質を担保する為に、2年連続D評価であれば、研修か解雇、と述べている。 しかし、私見ではどう評価するかが問題であろう。例えば校長や教頭が評価するなら教師は評価者の顔色を常に窺い、生徒そのものに向き合わないだろう。例えば進学率を指標にするなら、生きる為の力を育んでやる事よりも、近視眼的な受験テクニックに走るだろう。既に現場の教師が上層部・更に監督者の責任逃れの為の「書類仕事」に忙殺され、生徒そのものを見る時間も教育内容・技術の向上の為の時間も制約されている点も勘案する必要があるだろう。
'4.貿易(開国と書いている)について:農水省の発想の根本は食糧難の1940年代ベースであり、陳腐化していて役に立たない。「カロリー自給率」ではカロリーの少ない野菜や果物は無視し、畜産は盛んになればなるほど自給率は低下するという奇妙な算出方法もいまだ残る。輸入する「餌のカロリー」に比べ生産される肉や乳製品のカロリーは遥かに低いのでプラスマイナスで大きなマイナスに成ると云う馬鹿馬鹿しさ。
'5.エネルギー戦略について:日本社会は危機に備えのない状態で、「官僚の作った規制を守れば『絶対に事故はない』」という前提で国家も社会も個人の生活も組み立てられている。 英米では、「これだけの対策なら事故は1億分の1、更にこれを加えれば100億分の1」という「確率論」で、常に事故が起こった時の為の訓練や見直しを継続している。
'6.電力については、太陽光が最優力で発送電分離と料金体系の自由化を要すと述べ、それらの導入・拡大の為の税制上の手法まで具体的に記している。エネルギーについては、エイボリー アダムス氏の提言「新しい火の創造」などの提言が群を抜いていると思うが、可能な事は全て取り組んで欲しい。 財政再建と社会保障について:公正な徴税方法、及び医療への株式会社参入と混合診療を提言している。また、今の「官庁別法人」認可制を廃止せねば、例えば厚労省管轄下の医療法人や社会福祉法人は経営の素人である医師の院長が、(又は国公立・大病院なら天下りの公務員が事務長になり事実上運営・・更にまずい)経営せざるを得ず、医療もIT化が必要な分野なのにIT技術者などは医療機関で院長などの幹部には成れない、等と述べる。
教育・貿易・エネルギー・財政再建と社会保障については、現状分析や例証のボリューム、方策の比較検討やコストベネフィットなども言及が有れば、より説得力が増すかも知れない。 ウォルフレン氏は、維新の会は官僚OBがコーチしているから官僚独裁打破は無理、と述べているが、戦いでは「彼を知り己を知れば・・」である。相手を知るには又とないアドバイザーであろう。
幕末から明治維新までを第一の敗戦,太平洋戦争を第二の敗戦,そして構造不況から東日本大震災を第三の敗戦と呼んで,第一,第二の敗戦からまなんで第三の敗戦に対処する方法をかんがえている. 第一,第二の敗戦に 2/3 ちかいページ数がさかれているが,そのなかにも第三の敗戦からたちなおるためのヒントがちりばめられている. ただし,話題の中心になっているのは震災以前からある問題点だ.
震災後は理由も不明確なまま日本を賛辞する本がおおいなかで,この本は手きびしい. 日本はいまきびしい状況にあるのだから,元気はださなければならないが,解決するためには問題点をきちんとみすえなければならないということだろう
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