最近の本の中ではいちばん面白く読んだ。 このところ文芸誌にのせている短編では「うーーん…」と思うものが つづいていたので、どうしたんだろうと思っていたのだが、 これを読んで、やっぱりすごいなと。 少女マンガを読んでいるような気持ちになったが、 だからといってそれが悪いとは思わない。 つまり、非現実的に思えるようなところもよくあるのだけど、 作品内のリアリティとしては一貫した感じで読めるので、全然ありかなと。 主人公の自意識の「熱」にひっぱられてぐいぐい最後まで読まされた。
一夜にして日本中から注目される人物になった 綿谷りさ自身のシンデレラストーリーを投影させたかのような作品でした。 驚くべきことに、これまでの2作とは文体がまったく違います。 自らの経験を交え、身を削るように書いたであろうことを想像すると痛々しく、 そして新しいジャンルに挑戦した彼女の逞しさも感じられる意欲作です。
しかし主人公の苦しみや孤独がうまく描き切れておらず、 かわいいアイドルであるはずの主人公に、読者はまったく心ひかれない。 ファンになり、応援する気になれないから 彼女にタレント生命を脅かす致命的なスキャンダルが発覚しても、 読者は彼女に同情することができない。 そのへんの甘さが残念。
後半は18歳の女の子に味わわせるにはあまりに厳しい展開に・・・。
いくつか気になる点はあっても、 ここまで作家としての幅を広げてきたのには拍手。 次は何を見せてくれるのか楽しみ。 期待の意味も込めて星は3つにとどめておきます。
綿矢さんの作品では「最初の1行」でガシッ!っと掴まれてしまうのですが、 今回は特にそういうこともなく淡々と始まり終わった気がします。
気づくと、いつものように「いつ爆発するのか?」と期待しながら読んでいる自分がいました。 綿矢さんってこういうのも書けるんですね。
男性目線と女性目線の違い、性別が異なるとここまで考えが違うのか、 しかもほとんど真逆?そういうのが綿矢さんの言葉で細かく丁寧に書かれていたと思います。
小説だけどほぼ実話みたいな小説です。 若い女性、独身の女性には参考になるのではないでしょうか。
ブームになっている時は目もくれなかったけど、文庫化を機に読んでみた。 この本は評価が二分しているようですが、確かにこの文章、世界観、一見稚拙に感じると思う。 でもこれって実は計算されたリアルさなんです。大体高校一年生の女の子の自意識ってこんなもんでしょ。"私だけは他の子と違うの、私はそんなに安っぽくないの"的思い込みとかね。自分中心で見る世界も勿論狭いし、自分の中に沸き上がる感情をうまく表現する事もできやしない。だからこそ気になる男の子の名前を「蜷川」じゃなく、敢えて「にな川」って、平仮名で書いてあるんだし、リアル女子高生の一人称なんだから、語彙も少なくて当たり前。 しかしながら表現力が上手で、大人になると忘れがちな、歯痒くて、なんだかわかんない、ちくちくするような気持ちを「蹴りたい」と表現してしまうとことか、巧い。 主人公の一人称で進む話なので、いかにもな若くて狭い世界観には共感するのは難しいし、いちいち共感しようとして読んでたらかなりしんどいです。 でも、この「蹴りたい気持ち」にちょっと萌えました(笑)。少女漫画みたいな甘酸っぱさがあります(笑)懐かしさを感じる一冊。でも、このテクって一発しか使えないから、作者がこれからこの表現力をどう昇華させていくのかが見所ですね。ライトノベル的なノリで終わってしまうのか否か―?
「インストール」
不登校になる理由が曖昧なのも、母親が不登校に気づかないのも、少年の母親に追求されないのも、
説明がないところがかえって現代社会が抱える漠としたきしみのようなものを現わしている気がする。
明確な理由はないけど、なんとなく不満、
なんとなくだるい、なんとなくやる気が出ない。
総じてなんとなく不安というのは、現代人の多くが多かれ少なかれ感じている事だと思う。
最後、不思議なアルバイトから自然と撤退していく二人には、そんな不安な社会の中でも前へ進めるんだよというちょっぴりの希望が感じられて、そこがなんとなくいい。
|