本書の内容は、以前放送されたNHKスペシャル「マリナ~アフガニスタン・少女の悲しみを撮る」の番組に沿っている。 しかし、放送だけでは判らなかった前後関係や物事の背景が細かく書き記してある点がありがたい。 今、世間では映画「華氏911」が話題となり、たくさんの人が観ている。 その「華氏911」が「持てる者からの告発」だとすれば、映画「アフガン零年」は「持たざる者からの叫び」だ。 わたしは先日この映画を観る機会を得、悲しみという言葉を安易に使えないほどの衝撃を受けた。 映像の美しさと共に、アフガン人の静かな叫びがそこにあった。静かな叫びは、物事の本質を浮き彫りにする。 本書は、「アフガン零年」を観るにあたってのガイドとなり得る本であると思う。 たくさんの人が本書を、そして「アフガン零年」を観る事を願って止まない。
アフガニスタン出身の監督が描いた作品を見るのはこれが初めてのことだったので、そうした興味と共に『アフガン零年』を手に取った。そして今、映画を見終わって複雑な感情の中でレヴューを書いている。 面白いか、面白くないか、でいえば面白い。日本とは異なる文化の中で生活する少女の日々や、イスラム世界の描写は常に新しい感覚を伴って私の目に飛び込んでくる。脚本の構成からして、他の国に住む人々が見ることを前提としているようなところがあり、独裁政権下の特殊な環境を伝えようとする意志が感じられた。
物語の主役はまだ十代の少女だ。彼女はスラム街にいたところを監督に目撃され、数千人の中から主役の座を与えれたというのだから驚きだ。それ以外にも一般市民の中からスカウトされて映画に出ている人物は多くいて、頼りになるんだかそうでないのか怪しい少年も、映画に出るまでは道端で犬を売って生活していたらしい。 この映画をみて、結末を非難する人がいるかもしれないが、それは的外れな非難に思える。日本には日本の文化や歴史があり、同じように中東には中東の、イスラム諸国にはイスラム諸国の、アフガニスタンにはアフガニスタンの生活がある。そういう意味で全くの部外者である私が言えることは多くない。ただ、この映画を見れて良かったと思う気持ちは変わらない。
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