ジョセフ・カントルーブのオーヴェルニュの歌の全曲と、モーリス・エマニュエルの民謡由来の歌曲を詰め合わせたアルバム。 カントルーブは、ヴァンサン・ダンディの門下で、フランスの地方文化の研究に熱心に取り組んだ人であった。 そのカントルーブのライフワークとされる作品が、この5集からなるオーヴェルニュの歌である。第4集まで、1924年から1930年の間に編集されたものの、第二次世界大戦のため、最後の第5集は、カントルーブが亡くなる二年前に当たる1955年に発表されたのであった。
エマニュエルは、レオ・ドリーブの門下生だが、師匠と折り合いが悪く、教会旋法やオリエンタリズムに拘るエマニュエルは、ドリーブから破門同然の扱いを受けることになった。 自力で作曲家としての道を歩んだエマニュエルは、ブルゴーニュ地方の民謡に興味を持ち、カントルーブのような手法で、それらの民謡を編纂したのであった。
カントルーブらのフランスの民謡編纂は、その伴奏の華麗さが批判の槍玉にあげられたが、カントルーブは、民謡が歌われた土地の風合いを感じてもらうために必要な措置だと考え、亡くなるまでその方針を譲らなかったという。 結果として、民謡研究の成果としてだけでなく、優れた芸術歌曲として、多くの歌手たちがレパートリーに入れて歌っている。
アメリカ人ソプラノ歌手であるドーン・アップショウは、これらの歌曲の優れた歌い手の一人である。彼女がアメリカ人で、フランスの音楽など分かるわけがないという憶測に基づいて、このCDを無視するのであれば、それは賢明ではないし、もったいないことである。 彼女の歌唱は、オーヴェルニュ地方が空気の澄んだ美しい土地柄で、そこに住む人々も純朴なのだろうという想像を掻き立てる。 カントルーブの美しい伴奏も、そうした想像を立ち上らせることに一役買っているのだが、ケント・ナガノの率いるリヨン歌劇場のオーケストラの、こまかく神経の行き届いた演奏が、アップショウの歌唱の魅力を倍加させてくれている。 この演奏を聴くことで、オーヴェルニュ地方に行き、その風景を見て、そこの人々に会って親しく話をしたような気分にさせてくれるのだ。 フランスの田園風景を、耳で楽しむことができるというのは、なんとも贅沢な話だ。
ディスク6は抜粋の曲が多すぎる。だいたい6枚で101曲は無理がある。抜粋をなくして80曲くらいに減らしたほうがいい。101曲にするなら、ディスクを増やしてほしいね。コストの問題もあるんだろうけど。エイベックスは、100曲で10枚組にして、フェードイン、フェードアウトは一切ないけど、演奏がいまいちな楽団ばかり。こうしてみると、広く浅く聴いてしまいがちになる。
賛美歌から始まって、クラシックなオペラ歌曲、ミュージカルナンバー・ポップスと、ジャンルを超えたキリのCDです。 彼女の美声で、すべてが『キリ』という音楽に総括されます。 最初、何でこんなにごちゃ混ぜな選曲なのかと戸惑ったのですが、聞き重ねていくうちに、ビーズを列ねるように、彼女の歌の世界が続くのです。 ジャンルにとらわれずに、歌いたい歌を歌う、そんな姿勢が伝わります。 映画『眺めのいい部屋』で、キリの歌声を聞いてからずっと気になる存在でした。いろいろなCDが出ているので、どれを選ぶか迷ったのですが、いろいろな彼女の側面が見れてよかったです。
外国の曲の中で妙に懐かしい気分にさせてくれるものの代表と思われるのがカントルーブ編曲の『オーヴェルニュの歌』だと思います。
フランスのオーヴェルニュ地方は高原地帯で、フランスの中でケルト系の原語を唯一残す地域だそうです。カントルーブがその地域の民謡を採譜し、南仏起源の方言「オック語」をそのまま採用しています。普通のフランス語とは違う辺りが素朴なのでしょうね。
ロス・アンヘレス盤もキリ・テ・カナワ盤も洗練されていて好きなのですが、ネタニア・ダヴラツの歌う『オーヴェルニュの歌』が一番素朴で味わいが深いと思っています。
ピエール・ド・ラローシュの指揮によるものだということは分かっていますが、オーケストラ名は不詳です。不思議な録音データだと思いますが、「ダヴラツ」の名唱さえあれば他の要素は問題がないとも言えましょう。
『オーヴェルニュの歌』の全曲を最初に録音したものがダヴラツ盤だそうで、『オーヴェルニュの歌』の定番として存在し続けてきたのも当然かもしれません。ダヴラツの歌は広い草原を走り回っているような羊飼いの娘を目の前に想像してしまうような歌唱です。
40年以上前の録音ですが、それを越える演奏が出ないというのは、相性のよさと醸し出す雰囲気によるものなのでしょうか。素人っぽくて、明るく健康的な歌い方歌唱で、味がありますね。「ミラベルの橋の上」なんかは、上ずってオーケストラと微妙に合いませんが、これもご愛嬌です。
「バイレロ」や「野原の羊飼いのおとめ」の哀愁を帯びた旋律はどこか日本の追分のような味わいを感じてしまいます。
「懐かしさ」という感覚は洋の東西を越えるみたいですね。
藤原真理さんのチェロの音色って好きです、彼女の存在は映画「となりのトトロ」を通じて初めて知った次第ですが、彼女の作品を聴く際の特にお気に入りのシチュエーションは、森や林のあるキャンプ場近くの木漏れ日のあたたかい日差しの射す中で、森林浴を兼ねて聴くと精神が開放されてリラックスした気分で心地よく聴けます、音楽が自然に溶け込んで最高ですね、そんな体験があるからこそ、この作品はトトロの森で是非聴いてみたいと感じています
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