ジョイ=ディヴィジョンの元メンバーである三人のインタビューには、それぞれの際立った個性が濃厚に表れている。 屈折した性格のバーナード=サムナー、豪快なピーター=フック、温和なスティーヴン=モリス。「つきあいは殺人の刑期よりも長い」というサムナーとフックの、長年にわたる確執も所々に窺える。 「今でも、死んだイアンと、それを止められなかった自分自身に対して腹が立つ」とスティーヴン=モリスが語る、怒りと悲しみの感情が、後の二人からも共通して感じられる。三人三様の言葉と表情から滲み出るイアン=カーティスへの思いと、単純な言葉では表現しきれない三人の深い関係が、ストレートに胸を打つ。 未公開のものも含めた豊富な資料映像は、ファンにとって興味深いものであることは間違いない。しかし、それだけではなく、「ジョイ=ディヴィジョンという完璧な素材をできるだけありのまま提示したかった」と監督が語るこの映画は、観る者に生きることへの問いかけを生じさせる。
JOY DIVISIONというあまりにも短い青春を描いた伝記映画。 U2の写真家として有名なアントン・コービン初監督作品。 前編モノクロ映像で淡々と進む映画で、映画初主演であるサム・ライリーが、イアン・カーティスの自己破壊的な孤独を見事に演じきっている。 そのイアンの妻であったデボラ・カーティスの著作『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』を元に制作されているため、デボラの目線で描かれるシーンも多々あり、ロック・スターとしてよりも、人間としてのイアンを見せている。 けっきょくイアンは自分以外のすべてを愛せなかったのだと思う。 そして、自分さえも愛せなくなり、すべてに押し潰されて台所でひとり果てる最期のシーンは、わかっていながらも目を覆いたくなるほど痛々しい。
彼のすべてを肯定することはできないが、彼が遺したすばらしい音楽に敬意を。
届いてまず重厚なそのハードカバーの仕様に圧倒され、 中を開いてイアンの手書きのメモや古くなったギターのただずまいにただただ感動、 そしてなによりも凄まじいステージやリハーサルスタジオでのショットなど 有名な写真もあるけど、 半分近くが初めて見る写真で戦慄がはしりました。 カメラマンとバーニーの対談などテキストもとても充実していて、 英文ですがバンドに対する予備知識があれば十分読めます。 バンド、そしてなによりイアンに対する溢れんばかりの愛が詰まった本です。 悪い事は言いません、 ジョイ・ディヴィジョンに少しでも興味がある人は 手に入りやすい今のうちに必ず買いましょう!
79年作。冷たく乾ききったサウンド、呪詛の言葉を呟くような陰鬱なボーカル、難解な詩世界。同じ感覚を共有できない、誰からも理解されない、彼自身にしか理解できない、しかし他の誰にもたどり着けない世界、崇高で孤独な高みへとどこまでも果てしなく昇りつめ、閉ざされていく。2ndと比べるとまだ嘆きの度合いが多い分だけ絶望的ではないのかもしれない。陽気な表情を見せることもあるが、そういう所にこそかえって冷めたものを感じる。自分を見つめるもう一人の自分の冷めた視線。2nd「Closer」には劣るけど名作。ただ、こっちの方が若干聞きやすいかも。
「Disorder」は特に聞きまくった曲。ベースに、立ちくらみが来てガクンとなるような動きがあり、個人的にはそこが病みつきになった。「Day of the Lords」は一見単調に思えるが、その単調さは全て最後の爆発のためにある。「Candidate」は不気味な軋みが精神を侵してくるかのようだ。虚しく繰り返される言葉…やるせなくてたまらなくなる。「New Dawn Fades」はダークだが何とも切ない響きに胸をしめつけられる。「Shadowplay」はギター旋律が妙にそそり、非常にカッコイイ。「Interzone」はノリがよく熱狂的、詩世界・二つのボーカルのスリリングなやり取りにしびれる。「I Remember Nothing」はただただ深く深く沈み込んでいく。
ファースト『アンノウン・プレジャーズ』では、いわゆるポスト・パンクととらえられるような新しいポスト・パンクを奏でていたと思います。でも、このセカンドでは、もうスローテンポというよりむしろ、ポエトリー・リーディングに近いかたちの曲もいくつか見られ、のちにイアン・カーティスの死によって裏付けられたように、何ものかが動くのをやめようとしているときの不気味さが漂っています。 ニルヴァーナに大きく先立って、ネガティヴなものを扱いえたという点で、ポスト・パンク、ニューウェイヴというより、ほかに比類なきオルタナティヴ・ロックの永遠の名盤でしょう。演奏技術の低さやテクノロジーの低さは、問題意識の高さの前では、まったくわずかの瑕疵にすぎません。
ディスク1には、レア・トラックの追加はなく、初のデジタル・リマスタリングが施されているのみ。
ディスク2のライヴ録音は、アンノウン・プレジャーズ【コレクターズ・エディション】のディスク2よりも、観客の会話が入ることも少なくなっています。ほかのライヴ録音と同じで、ザ・スミス、ニルヴァーナにも出せない憂鬱な靄に包まれたようなライヴ演奏です。とてもいい。 しかし、スティル【コレクターズ・エディション】、ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディヴィジョンにも、結局、ライヴ録音を特典ディスクとしてつけ、デモや未発表スタジオ録音を入れないのなら、それぞれをリマスター盤として出して、ライヴ四枚を『ライヴ・ボックス』としてリリースすべきではなかったのか、と思います。
日本盤のみ、ディスク2を含めて歌詞・対訳つき。
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