先に希望も絶望なく生まれた時から亡びることが人生という少女(ユキ)役に、この声優を使ったことがこの作品の双刃の剣だったのでしょう。 私は、抑揚の無い、感情が麻痺しているようなこの声優さんによって、ICEの世界が静かにひたひたと迫ってきました。 この声優を下手ととるか、世界観の忠実な体現ととるかで、作品自体の評価は180度異なるでしょう。 一般のアニメ声優は表現過剰になりがちで、この少女役をそういう風にやったら「面白く」はなっても、「静かな恐怖感」や「刹那的な世界観」は消失していたでしょう。少女(ユキ)を取り巻いているのは、感情など持っては生きられない世界なのです。 作り手が主張せずに受け手に「考えさせる」という狙いとして、このキャスティングは見事だと思いました。
夏が来ると思い出す百合のように気高く美しい人… そこに大野智はいない。いるのはただ悲しく儚い復讐鬼である。悲しさ、憎しみ、迷い、優しさといった複雑な感情が表情から全身から静かに伝わってくる。等身大の自分を演じる若い役者が多い中で稀有な役者さんだと思う。そしてその才能を世に知らしめた脚本、演出、共演者も素晴らしかった。またこの様な素晴らしい役者とスタッフの作りあげる心の奥底に響くドラマを見たいものだ。
長谷川伸シリーズ第1作の「関の弥太っぺ」がとてもおもしろかったので、第2作目はどうなるだろうかと期待していましたが、待った甲斐がありました。今回のメインの配役は「へば!ハローちゃん」からで、沓掛時次郎には雨竜光二、おきぬ役がハローちゃん。ストーリーは全く違いますが、おきぬとその息子を守ろうとする時次郎の想いが元作品での二人の関係を何となく想起させ、自分には2倍楽しめる作品でした。もちろん、単独の時代劇としての完成度も高く、おきぬのために出入りの助っ人として闘う時次郎の姿は鬼気迫る迫力です。また、言葉のしゃべれない太郎吉が時次郎に刀を捨てさせるシーンは胸を突かれました。長谷川伸の原作も映画も全く見た事はありませんでしたが、このシリーズは長く続いてほしいです。3作目がどうなるか今から楽しみです。
キャラクターと原作が、これまでの長谷川伸シリーズの中で一番合っているように思える。 「有我」大好きな言葉です。 これからも期待してます。
1891年公開、監督、野村芳太郎、原作、遠藤周作。 稲川圭子(小林麻美)の恋人田村樹生(小林薫)は、4兄弟の末っ子ですが、その上の2人は次々と蒸発し、一番付き合いのあった水戸の兄(渡瀬恒彦)も忽然と姿をくらまします。そんな状況で、不安に陥った樹生をみかねて、圭子は、精神科医、会沢(高橋悦史)と相談しますが、次々と変なことが起こり、ついには樹生までが失踪してしまいます。総ての原因が熊本にあると考えた圭子、会沢は熊本を訪れますが・・・ この当時は、横溝作の金田一物がヒットしていた頃でその線を狙って、日本土着ののオドロオドロしたミステリーを撮ったんだと思います。しかし、4人が次々と失踪する大きな仕掛けのわりには、解決というか真相はしょぼく、前ふりと結末がつりあっていません。 しかし、配役が素晴らしい!小林麻美のスタイリッシュな姿が見られるだけであり難いのに、渡瀬恒彦、宮下順子、米倉斉加年、藤田まこと、そしてなんと、頼近美津子・・・・脇役が素晴らしい!! ストーリー自体は平板ですが、最後にツイストが2つ。1つは大体想像できますが、もう1つは、完全にやられたと思いました。しかし、配役に目を付けていればあるいは・・・ 何度も書きますが、冒頭の仕掛けと結末が釣合っていませんが、配役が素晴らしい!!特に幻の小林麻美がたっぷり見られるのと、脇を固める共演者の絡みを見る映画でしょう!!
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