NHK朝ドラ「ゲゲゲの女房」好評の中で、水木しげる夫婦の人生が改めて関心を呼んでいる。
貸本を知らない、あるいは懐かしいと感じる多くの新しいファンには、
あのドラマの棚に並ぶ「墓場の鬼太郎」ってどんなんだろう?って気になってしょうがない。
そこでこの品薄が訪れたわけですが、単にどんなものかを知る以上に、この作品は楽しい!
内容は細かく触れぬとしても、遠慮なく特定されそうな著名人のパロディは、貸本の時代があああの頃かとより実感できるし、
さらに故人が実名で某所で出るあたりは、ダンテ神曲を思い起こさずにはいられない。
とにかくそのサービス精神の旺盛さは、次ページの展開が全く読めない面白さと重なり、増幅する。
そして、NHKドラマとのシンクロ。これ、どう考えても増刷しなきゃだめでしょ!
墓場鬼太郎は「ゲゲゲ」のような良い子ではない。しかし、こっちのほうが好きになっちゃうこと間違いなし。
子供たちには薦められないが、
大人が読むマンガとしてはたいへんお薦めである。
トランク永井・大空ひばりなど、
当時の世相がわかるのも魅力のひとつ。
関西では、先週から墓場鬼太郎のアニメが深夜に放送されているが、
それも楽しみである。
三洋社版の「鬼太郎夜話」全4冊の復刻版。表紙カバー、カラーページ、厚めの紙質など、ファンのための愛蔵用ボックスセットになっている。「墓場の鬼太郎」シリーズで最も長編となったシリーズだ。
4枚セットのカラー表紙絵が今回の特典。しかし「化烏」「ミイラ島」「寄生人」「墓の町」と、いずれもキャラクターの描かれていない不気味な情景絵なので、額装して飾ろうとすると、必ずや家族に反対されるでしょう。フハッ。
ゲゲゲの鬼太郎でも名作とされたストーリーの、貸本版オリジナル。絵としても水木タッチが確立されつつある。
4巻目の最終コマには「つづく」とあり、コマ外には「いよいよ面白い『鬼太郎夜話』第五集をおまちください」とあり、『妖奇伝』の打ち切り、兎月書房との確執による中断に続いて、鬼太郎ものが3度目の中断に至ったことを生々しく物語る。一説には、「カメ男の巻」という第五巻用の原稿が三洋社の倒産により紛失したという。
…このとき、将来は鬼太郎が6回もテレビアニメになるなんて、誰の脳裏に浮かぶこともなかったのだ。
どこかで指摘済みかもしれないが、今回貸本オリジナルスタイルの復刻版を読んで、新しく気付いたことがある。
1、2巻では「おにたろう」とルビがふってあるが、3、4巻では「きたろう」になっているのだ。また、オリジナルでは「きたろうよばなし」と読んでいる。
ちなみにサンコミックスの貸本漫画傑作選に収録された際は、「きたろう」に統一されている。
現在では「きたろう」「やわ」と統一された読み方にも、こんな歴史があったのだった。
昔から気になっていた漫画なのでとっても気に入りました。鬼太郎の真の姿がここにある。
僕は昔から水木しげるさんの作品群の大ファンなのですが、貸本まんが時代の幻の名作『墓場鬼太郎』を初めて読んだときの不気味さと爽快さの同居した独特の感覚は、今でも忘れられません。
そこには『ゲゲゲの鬼太郎』に見られる人間贔屓のお人好しな鬼太郎はおらず、もっと妖怪らしい禍々しさを持ちながら、同時に人間臭い行動も取ったりする、実に魅力的な鬼太郎、目玉おやじ、ネズミ男がいます。
しかし、驚かされるのは後年の『ゲゲゲの鬼太郎』の基本的なコンセプトやストーリー仕立てが『墓場鬼太郎』において既に出来上がっていたことで、鬼太郎に対する水木さんの思い入れの深さを感じます。
復刻版が文庫化されたことで本書はより多くの人に読まれることになるのでしょうが、『ゲゲゲの鬼太郎』しか知らない今の子どもたちにも鬼太郎という存在の深みが伝えられるのでいいですね。
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