リラシックのアルバムは沢山出ていますが、このアルバムは静かな曲ばかりで、休まります。 2枚組と言うのも良いです。1枚でも飽きることなく聞くことが出来ます。
他のリラクシングはうるさい曲が混ざってますが、このアルバムは良いですよ。安心して聞けます。 買ってよかったと言える、CDです。
ルガンスキーは、現代のロシアで最高のピアニストの一人とされている。正確無比な演奏技巧に加えて、豊かな情感の表現でも知られている。この作品でも彼のテクニックは冴え渡り、ラフマニノフの魅力を余すところなく堪能できる。同様にラフマニノフの演奏には特別の思いをもって演奏しているアシュケナージの楽興の時と比べると、ルガンスキーの方がテクニック的な冴えやロマンティックな表現力では、一枚上手。いずれにしても、この作品は、ラフマニノフの前奏曲、楽興の時の演奏としては現代最高峰の演奏であることは間違いなさそうである。ただ、本当に素晴らしい演奏なのだが、それでもなぜか、やや物足りない感じが少しするのは、彼の優等生的すぎる演奏が、何かの殻をついぞ突き破ることがないせいなのか、、、?
ロシアのピアニスト、ニコライ・ルガンスキー(Nikolai Lugansky 1972-)によるラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873-1943)の2曲のピアノ・ソナタを収録。ピアノ・ソナタ第2番については1931年版に少し手を加える形のスコアを使用している様子。2012年の録音でAmbroisieレーベルからのリリース。第2番に関しては1993年以来19年ぶりの再録音ということになる。(ただし、スコアは若干異なる)
ラフマニノフのピアノ・ソナタについては、第2番はすでに名作としてのステイタスが確立しているが、第1番はまだ一部のラフマニノフ・フアンのための音楽となっている感がある。しかし、近年では、このソナタについても徐々に評価が高まってきている。私がこれまで当曲を聴いてきたのは、ヤコフ・カスマン(Yakov Kasman 1967-)、ワイセンベルク(Alexis Weissenberg 1929-2012)、アシュケナージ(Vladimir Ashkenazy 1937-)のいずれも優れた3種の録音であるが、それぞれに満足してはきたけれど、その一方で、より多くのピアニストにこの曲を録音してほしいと思っていた。そこにルガンスキー盤が加わり、いよいよ陣容は厚みを増してきたように思われる。
ルガンスキーは、ラフマニノフを弾くのに実に相応しいピアニストだ。膂力にあふれたピアニズム、彫像性ある立体的音響の構築、そして旋律を美しく響かせるセンス、いずれも超一級の才がある。特に、今回収録されたピアノ・ソナタ第1番を聴いていると、「この楽曲はこういう風に演奏されることを待っていたのではないか?」と感じてしまうほどに、求心力と説得力に満ちた力演だ。特に前半2楽章が秀逸で、ラフマニノフの野心的ともいえる恰幅のあるテクスチュアを見事に解きほぐし、瞬時に論理的に構築していく爽快感は比類ない。情緒的なニュアンスの扱いも過不足なく、あらゆる点からみて欠点の見いだせない出来栄え。終楽章も立派だが、クールに透徹したスタイルについては、より情熱的な放散を求める人もあるかもしれない。しかし、もちろん、非常にレベルの高い演奏である。
名曲の誉れ高いピアノ・ソナタ第2番においても、ルガンスキーの解釈は論理的で蓋然性の高さを感じさせる。言い方を変えれば、この浪漫的なソナタに、一種の古典的統一感をもたらしているので、その点について、若干の齟齬を感じる方もいるかもしれないが、そこで鳴っている音楽は、純度の高さを感じさせる。この効果は、ルガンスキーの高い技術、五指の力、高い集中力によってもたらされている。音が均質であることの絶対的な美観を、これらの楽曲でここまで追求しえたことには、多くの人が驚愕することではないだろうか。
以上の特徴をもって、私は当盤が、これらの楽曲の録音として代表的なものとして、当然数え上げられるべき一枚であると考える。
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