Tim Buckleyが残したオリジナル・アルバムは9枚。この5枚組には古い順から5枚収録されています。1作ごとに音楽性を変化させながら才能を開花させて行く様子がわかります。 このうちの4枚目にあたる『Blue Afternoon』は発売当時のレーベルが違っていました。そのためか、過去CD化されたことがありましたが、廃盤になってから久しく入手困難でした。幾度か再評価の兆しがあっても再発売されることがないまま年月が過ぎていましたが、この5枚組のおかげでようやく容易に聴けるようになりました。『Blue Afternoon』1枚欲しいためにこの5枚組を買う人が多かったのではないかと思います。 なお、『Blue Afternoon』は2013年9月になって単体CDとしても再発売されましたので、この1作だけのために購入を迷っているならそちらの購入をオススメします。
このセットに収まっていないオリジナル・アルバムは4枚。 6枚目のアルバム『Starsailor』は過去にCD化されたことがありましたが、『Blue Afternoon』と同様に長い間入手困難になっていました。この5枚組には収録されていませんが、2010年に再単体のCDとして発売されました。この『Starsailor』はTim Buckleyの実験性が最も発揮された入魂の作品ですが非常に難解な作品でもあり、今でこそ高い評価を受けていますが発表当時は一般的な評価を得られることはありませんでした。それも一因になったのかこの後のTim Buckleyの音楽性は低迷していきます。7枚目の『Greetings From L.A.』はまだ聴き所もあるのですが、8枚目『Sefronia』と9枚目『Look At The Fool』は俳優が余興で出したような印象すら持ってしまう味わいどころの少ないコンテンポラリー音楽になってしまいました。その時代も含めて変化し続けるTim Buckleyとも言えるのですが、これらの晩年の作品は現在でもほとんど再評価はなされていません。
そんなわけでTim Buckleyの主要6作品のうち5作品をこの5枚組で楽しむ事ができます。 その中で個人的なオススメは3枚目『Happy Sad』と5枚目『Lorca』。 この5枚組が気に入ったなら『Starsailor』も入手困難になる前に手に入れる事をおすすめします。Amazonでの取り扱いはありませんが、2013年9月現在、新品で定価での購入が可能なようです。
ティム・バックリーは60年代後半から70年代前半に活躍した、スケールの大きい美声のシンガーソングライター。本作品は彼の2枚目で代表作。分野的には60年代のサイケデリックに分類されているが、彼の作品は同時代人だけでなく、後世のジャンルの異なるさまざまなアーチスト達にも取り上げられていることからも、その美的世界は普遍的なきらめきを放っているといえる。彼の作品やパフォーマンス(死後いろいろなライブ未発音源が発掘された)は時期によって、かなり違う。私は、彼の残した全ての作品が好きだが、特に1枚目と2枚目は詩情色豊かで、内省的な内容だが、不思議な陶酔感があり、いったんハマると抜け出せないような強烈な魅力がある。じっくり歌を聴き込みたい人にはお勧めします。
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