映画というのは何よりもまず「見る」ものなのだと、強烈に印象付けられました。この点に関して、ストローブ=ユイレは他の映画監督よりも格段に厳しい姿勢で臨んでいると思います。ただし、現代社会のトレンドとは全く逆のベクトルを持った作品ですので、大衆人気の高い映画と同様の見方をすると全く楽しめないし、この映画の良さも分からないでしょう。一部の人々の間では有名ですが、広い知名度や人気を獲得していないのはそのためだと思います(国内盤CDに載せられているレオンハルトやアーノンクールの経歴を見ても、この映画のことには触れられていません)。このページの評価も最高から最低まで様々ですが、分析してみると、やはりどのような見方をするかで評価はだいぶ違ってくるようです。
私は映画について詳しいわけではないので、技法についての記述は避けますが、この映画にストーリーとかドラマを求めてもダメだということは注意して下さい。「アマデウス」のような要素を求めているのでしたら、見ない方が良いです。で、これは音楽映画とも取れるわけですが、ストローブ=ユイレが非常に音楽を分かっていて驚嘆しました。聴くべきものも、見るべきものもてんこ盛り。これでこそ、古楽器で演奏する意味があると、納得させられる演奏が多いことも素晴らしい(この厳しさはなかなか聴けない)ですが、それだけでは映画にする意味がありませんから。こういう類の映画を作る以上は、ストローブ=ユイレのレベルまではいかなくとも、やはり音楽に対してある程度の見識を持っていてほしいです。
人が求めるものはそれぞれ異なります。まして大衆と全く異なる方向性のこの映画が広く受け入れられることはないでしょう。しかし素人なりに私はこう考えます。音楽には音楽の、小説には小説の語法がある。なら映画は映画なりの語法を用いるべきだと。「アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記」は私の考えを満たしてくれました。出会えてよかった。
デジタル録音のチェンバロの音ってキンキンしててうるさくないですか?この盤で聴かれる自然な広がりと厚みが有って適度(ここ大事(笑))にシャープな音、こんなんが良い録音だと思います。リマスターも丁寧ですね、耳に優しいチェンバロのゴルトベルクとしちゃ最高レベルでしょうね、好きです、こういう音。 まあー50分弱の録音なんでリピートはほとんど無くて、無駄な装飾音も無いんで、各々の変奏のメロディーとか曲の構造なんかが凄い解る、ワタシみたいな素人でも(笑)素晴らしいですね… 最近のは一時間はおろか百分近いのも有って構造が解りにくくなったんだね、それはそれでピアニストの表現として当たり前なんだな。 じゃあレオンハートが自己表現としての演奏をやってないかと言うと違うと思います、これが当時としちゃ精一杯だと思うんです、レコード会社としては一枚に納めたいだろうからねぇ、グールドの最初の録音もぴったしアナログ盤一枚だし、最近出てるやつなんかも計った様に七十分から八十分の間に納めてるのも同じ事情なんじゃないかと思われるんだね。芸術つったって言わば産業なわけで絵だって額縁の号数に制限されるよね。 この盤はゴルトベルクのマスターピースとして何時までも手元に置いておきたい名盤なんだと思います。
ダブりが有るだろなと思ったが、奇跡的になかった…マイナーな作曲家の作品が多く、廃盤になってるディスクを集めてる印象…ソニーとしては商魂逞しい(笑)既に《平均律…》など、この時代の主要作品を持ってるリスナーにとっては有り難いボックスです。
ってか…レオンハルトのオルガンとか単品じゃ買わないよね(笑)でも…実際、聴いてみると案外良い…そういう地味な作品ばかり取り合わせてます。
《ゴルトベルク…》は旧盤と聴き較べると、「何でわざわざ、こんなに小難しい弾き方するんだろ」と思います。独特過ぎるアゴーギクとタイム感です。
まあー…それは端的な一例に過ぎませんが…このボックスの時代のレオンハルトは、演奏家というより、バロック演奏の研究者としての側面が強いんですね。
それで…私も、この時代の彼のディスクは敬遠してたんですが、改めて聴き直すと、愛想よさは無いが素晴らしい演奏だと思います。
|