南米の音楽と耳にすれば、バンドネオン風の軽音楽と思われがちだが、魅惑的なピアノの三舩優子のピアソラ(Piazzolla)には、例えばグレン・グールドの奏でるヨハン・セバスチャン・バッハのパルティータNo.6の導入部を思い起こすものを感じるだろう。このピアソラは而して現代的なクラシックである。最後は「天使のミロンガ」で締めくくるのも心地よい編集である。アストル・ピアソラは、グレン・グールドのファンであったことも知られている。Sul America-南米ピアノ作品集-
簡単にピアノは弾けないと思いますが、分かり易いので続けてみたいと思います。
超絶技巧を持つ三舩優子ならではの軽快なラプソディー・イン・ブルー! それだからこそ肩肘張らずにゆったりとした気持ちで聞くことができる。 アルバム全体に三舩優子の自由な感覚が満ちあふれている。
最近の現代音楽の演奏の中でも稀にみる、ハイレベルの完成された演奏が楽しめる一枚である。 左右の手にバラバラなリズムと運動を要求する、バーバーのピアノ・ソナタは、譜面をさらうだけでも至難の業であるのに、三舩優子はこの超難曲を、いとも簡素でクリアな構造に仕立て上げ、クラシック音楽をあまり聴いたことのない者にも親しみやすく、わかりやすい音楽に再現している。 ともすれば無味乾燥で抽象的、意味不明の演奏に流れてしまいがちな、このソナタの文法構造をここまで鮮明化し浮かび上がらせることに成功した演奏は、おそらく過去のいかなるピアニストのレコーディングにもない、特筆すべきものがある。 一曲一フレーズへの細かい色づけの結果、曲全体の雰囲気も極めて特徴あるものに仕上がっている――『間奏曲』がかもし出す静けさと安らぎ、一瞬の沈黙の深い意味。作品『遠足』の軽快なリズムの裏にある作曲者自身の遊び心や悲哀。 バーバーの音楽は、総じて透明感のあるフレーズや音の重なりとともに、その間につねに繰り返し現れる「沈黙」の瞬間が、もうひとつの「音」としての実に重要な役割を与えている。まさに「沈黙」も「音」の一種であり「音楽」の不可欠の構成要素であることを、これほど直截的に感じさせてくれるのは、バーバーならではの醍醐味だ。 この作品集は、長年レコーディングの構想を温めてきた、バーバーの演奏にかけては絶対の自信と深い愛着をもつ、三舩優子ならではの快挙であり、本人のデビュー20周年記念、さらにバーバー生誕100年を迎える今年を飾るに相応しい記念碑的演奏である。
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