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私は仕事柄マーケティングの視点から本書を読んだ。
 最初に出てくる、雲海テラスは、ロープウェイを管理・運営している方々が
 いつもの見慣れた風景を顧客に見せたいと思い、自らテラスを開くことで
 夏の施設稼働率向上に貢献した。
 これは地域資源は身近なところに眠っているということの良い事例であろう。
 
 また、ブレストンコートのウエディングビジネスの、1回きりの挙式客を開拓
 するため、まだ結婚を考えていない人、娘にアドバイスをする母をターゲットにした
 スイーツ博の開催などは、新たな顧客を開拓するいい事例である。
 
 こういった取組の元になっているのは、星野氏が再生企業にはじめに打ち出すコンセプト
 であり、これはしっかりとしたマーケティングリサーチにより裏づけされている。
 それをもとに再生企業の従業員が、自分達の力で顧客満足とは何かについて真剣に
 考えることで、リピート客を創出し、稼働率を上げ、収益改善へとつながる。
 
 もう少し詳しく再生手法を知りたかったが、軽く読むには適している。
 
 
   
不振にあえぐ日本の観光業界にあって、星野リゾートの成功は、常識外れだ。
 その成功は星野社長の天才的な経営センスによるものだと思っていたが、
 彼が自分の直感ではなく、普通の本屋で容易に手に入るような古典的な
 ビジネス書を読み込み、それに徹底的に忠実な経営を行っていることに驚いた。
 
 本書で挙げられている本を読んだ人は多いと思うが、
 これほど基本に忠実に、ビジネスで実践している人は少ないだろう。
 しかも、自分が理解するだけでなく、従業員にも教科書のコンセプトを理解させ、
 実行させる仕組みを作り上げている。
 
 簡単なようで、大半の企業ではできていないことであり、
 ここが星野リゾートが凡百の企業から差別化できている本質なのだろう。
 
 また、米国系の「教科書」が並ぶ中で、経営者の姿勢の教科書として、
 内村鑑三の著書が入っていたのも印象的だった。
 単なる経済的な成功ではなく、人間としての品性を大切にしているところは、
 まさに日本人経営者の鑑と呼ぶにふさわしい人だと感じた。
 
 
   
他カンブリア
 ソロモン
 ガイアで拝見しました
 
 
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