ジャケットにはシュールリアリズムとかシュールレアリズムとか書いてあったと思いますが、表記が統一されていないのと、どちらも間違いだと思います。シュルはフランス語なので英語のリアリズムと一緒にするとおかしいです。シュルレアリスムと表記しなくてはいけないのではないでしょうか。 通常の物語がたいてい回収されるのに対し、シュルレアリスムは物語を回収しないことで隠された無意識を垣間見ようという、ある意味大変理論的な(頭でっかちな)手法だと理解していますが、この作品はあんまり頭でっかちになっていなくて、見ていて凄く面白いですね。 冒頭の女の目を切る場面など、スプラッター映画の原点ともいえます。グロテスクな場面の連続はつながっていないようでつながっていて、ただイメージを並べているだけじゃなくて、ちゃんとイメージが広がって映画を前へ前へと進めています。 女の脇毛がなくなって、男の顔に生える、とかいうアンマリなお笑い場面もあったりして、楽しめます。ダリやブニュエルの茶目っ気も伺えました。古い映画なので映像は劣悪ですが、今見ても非常に面白いです。15分の短さなので、物語がなくても全然飽きませんし。 15分の短編なのにこれまでのDVDは結構高かったのですが、安いWHDジャパン版が出たのは大変に喜ばしいことです。
『黄金時代』(1930)で有名なスペインのルイス=ブニュエル監督の作品。シュールレアリズムの代表的映画で、何よりも「映画が暴力であること」を証明した作品。正直いって夢にまで見るので、気の弱い人はお勧めできない作品だ。
本作について、高名な映画評論家から市井の人までが様々な感想・批評を述べている。でも、それらが全く「無意味」に思える作品というのは、メジャー映画ではこれだけだろう。ただでさえ17分と短い作品だが、冒頭、女優の目の玉がカミソリで切られるシーン、この数秒が本作を永遠にしている。撮影された1928年当時、人々は「トーキー」という音の出る映画の登場にびっくりしていたが、このシーンでも度肝を抜かれたと思う。シュールなイメージ映像の羅列といえばそれまでだが、確かにその映像は斬新だ。映像力で魅せるのは、VFX全盛の今日ばかりではない。サイレントながら自分がびっくりした作品に、1919年の「The Tong Man」がある。当時の世界的スーパースター・早川雪洲の製作・主演作だが、ラストシーン、恋人役のヘレン・ジェローム・エディと船に乗るシーンで、カメラを太陽に向けて撮影しているのだ。主役ふたりは光に照らされてシルエットのようになっている。宮川一夫は「羅生門」が最初だと豪語していたが、20年も前にこの手法は生み出されていた。映画ファンならばとにかくサイレントの名作を観まくって欲しい。「アンダルシア」のような著名作以外にも、新しい発見がいくつも出来るはずだ。本作は星がいくつだのいう問題じゃない(笑)。とにかく5つ星です。
カミソリが女性の片目を切る冒頭のシーンはあまりにも有名だが、アンダルシアの犬は全編がイメージの洪水のような映画だ。脈絡のないまま、蟻の群がる手、らくだの死体など、シュールなシーンが次々に登場する。ブニュエルとダリが見せてくれる15分のおもちゃ箱。映画というものを純化していった結果、ふたりはこの作品に行き着いたのだろう。
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