現代音楽の作曲家として有名なブルーノ・マデルナの指揮によるベルク「ヴォツェック」のオペラ映画。ほとんどが戸外で撮影されているが,時代としては鮮明なカラー映像だ。若きクルト・モルやユリナッチ(裏ジャケットの美人は彼女の演じるマリアではない)が見られるのがうれしいが,なんと言ってもインパクトがあるのはヴォツェック役のトニ・ブランケンハイムだ。その貧しさと苦悩を背負い込んだような顔と風体は,まるでヴォツェックその人のようである。社会の底辺に生きる内縁の夫婦(貧しいために正式の結婚ができず,子供も庶子扱いとなる)が救いがたい悲劇になだれ込んで行く様は何度見ても目頭が熱くなる。やや古い音質と,地声に近い発声で歌われていることが気になる人もいるかもしれないが,「ヴォツェック」に興味のある方なら一度は見ておくべきだろう。
作曲者の突然の死で未完に終わった20世紀オペラの傑作を、遺族に内緒のまま補作しちゃった「完全版」を記録した映像なんであります。社会的にのし上がり、オペラの真ん中を境に没落してゆくヒロインたちと対応した音楽の構成が、これで明快になったわけ。歴史的記録なんだけれども、映像と音声のクオリティはいまいち。VTR並にぼやけた解像度とノイズが浮き上がった暗すぎる舞台には驚いてしまいます。音はPCMのステレオのはずなんですがモノラルに近い音場感です。あくまでも記録映像として楽しむソフトといった感じでしょうか。(^_^;
全3幕のルルが遂に見れた!! CDでは知っていたがビデオ化されるのは今回が初めてとのこと。 感無量です。しかし、録音はいまいち。これはモノラル録音なので しょうか?録音に関してはCD(レコード)版の方が良いです。この ことから星の数は4つにしました。 でも演奏はこちらのほうが生々しく聞こえるように思えます。 どちらにしても、シェローの舞台で観れるのもグッド!!
JR新宿駅東口、左端の改札を出てすぐ左折&徒歩約10秒の場所に位置するビア&カフェ「ベルク」。本書はその経営者である別姓の夫婦が、互いに切り拓いてきた道を回想(ときには現在進行形の話も)するかたちで本文が進められてゆく。 「本当は飲食店なんてやりたくなかった」世間知らずの一人の若者(著者)が、親に頭を下げ、一念発起して一番下っ端から親の経営する喫茶店に入り現在の「ベルク」の土台を作ってゆく。そのとき著者は28歳。それから18年の歳月が過ぎ、「ベルク」は親の代の純喫茶から、1日平均1500人もの利用客でにぎわうビア&カフェへと成長した。ベルクを応援するブログでは、今は遠い土地へ越してしまったかつての客からも「頑張れ!」とメッセ―ジが届く。ベルクはそんなお店だ。 …と、このように書くと「そんな一等地でやれば成功するに決まっている」「親のすねかじりかよ」と思われる方も、なかにはいるかもしれない。だが、新宿という街は、立地だけで商売が成り立つほど甘い土地ではない。そして実際にベルクに一度でも足を運んでみれば、ベルクが支持される理由が分かるだろう。お世辞にも広いとは言えない店内、混雑時には客の半分は立っている(カウンター席)。それでもレジ前には行列が絶えず、なのに店内には殺伐とした雰囲気など微塵もない。店内では男も女も、グループも独りも、何ひとつ気がねすることなく自分の時間を満喫している。それを支えているのは、化学調味料とは無縁の吟味された食材と、これまた美味くて安いビールをはじめとする飲み物類だ。もちろんコーヒーも断トツに美味い。いまどき、210円(!)でブラックで飲んで「甘味」のニュアンスを感じさせてくれるコーヒーが、果たして全国に何軒あるだろうか。自慢のホットドックやハム類は、はじめて口にした人は「何か物足りない」と感じるかもしれないが、物足りないまま、すぐに「お代わり」がしたくなっているハズ。そこがミソである。 ベルクのもうひとつの顔は「壁」だ。森山大道など、写真家を目差す者なら目からウロコの写真家や作家たちによる作品がさり気なく展示されている。毎日山盛り人が訪れ、店側からも日々何かが発信され、空気が澱むことがない。まさに新宿を代表するカフェと言っていい。 ベルクがなぜ「ベルク」に成り得たのか?その答えが本書にはある。詳しくはぜひ購入して読んでいただきたいが、そこで示されているのは、意外なほどの正攻法である。自分に何もなければ、ある人(職人)を探し出す、しかし任せっきりにはしない、常に対等でいられるよう自分たちも切磋琢磨する。美味くて安いものをお客に出すための苦労は厭わない。主人公はお客である…そんな当たり前の、しかし実践するのはたやすくないことが著者と協同経営者(夫婦)の肉声で語られている。 ベルクは現在、駅ビルオーナーのルミネから無理矢理「出ていけ」と圧力をかけられている。圧倒的な大企業の力を前に著者は、自らの存在価値を店舗存続の署名というかたちで客に問うた。その答えは、すぐに1万人もの無名の応援というかたちで返ってきた。普段は黙ってベルクに通っていた著名人も躊躇せず声を挙げた。新宿、秋葉原の書店ではベルクを応援したい書店さんがフェアを行ない、それは大きなうねりとなって今も続いている。 1日平均1500人×18年の実績を誇るカフェの活きた哲学が、まさにここにある。
個人経営の喫茶店というのはビジネスモデルとして、とっくに淘汰され、廃れてしまったと思っていましたが、本書を読んで、こんなにも元気な喫茶店(と言うよりもバー?)が新宿に生き残っていたのかと大いに驚きました。
たかだか一杯のコーヒーのためにここまで真剣になれる店員さんがいるという事、そしてお客はそれを分かっているからこそ、足繁く通ってくれると言う事実。一事が万事、お店のハートがが伝わる商品、サービスを提供する事を貫き続け、現在のような繁盛につながっている点に感動します。このようなスタイルの経営は大手のチェーン店では出来るわけが無く、これこそが個人経営のお店が生き残る方法なのだと分かります。
こういうお店はまだまだあるはずですし、是非見つけてみたいと思いました。
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