【作品の感想】 つまるところロードムービー感が良いんですよね的なことを言う人もいたりして、なにそれロードムービーって、日本語で言ってよ日本語で、けどそんなことより大事なことがあるじゃん、ハートっていうのかな。この作家の書くそれ以外のジャンルの作品、たとえば少年時代モノはつまらないのかと言うともちろんそちらも面白くて、この面白さの根幹の根幹はいったい何なのかというと、結局は島尾氏の例の有名な書評に書かれてることに尽きてしまうので、少し引用するぜ
「言葉を竹をたてかけるぐあいに並べただけなのに、行間から語りかけてくる何かがあって(中略)、こころよい律動をともなった文体で、ある過程を記録しつつ示してくれる」
やべえよな、もうことばはいらねえ。どの作品も10ページ以下で終わるものが多くて、非常に断片的で何が面白いのかさっぱりわからないって人もいると思うけど、自分はこの作品は掌編小説の理想形じゃないかと思ってて←これは隣のパキスタンが言ってることで俺じゃねーぞ、好きな掌編集は?と聞かれると間違いなくこのアポロンの島が一番に出てきます、しかしな世の中にはまだまだ本があるんだってことだけは忘れるな。
【おすすめ作品】 「東海のほとり」・・・小川国夫を読んだことがない人はこの作品中では、一番わかりやすい作品で、なぜかというと断片的ではなく、ちゃんと物語らしいものがあっていわゆる普通の短編っぽいからってのはほんの一部だけの話しなんだがな。少年の心の機微をうまくとらえてて、端的にいえば「黒歴史」的なものなんだけど、男性なら共感という観点で読めるんじゃないかと思うかなあ、実はぜんぜん違うこと考えてるんだけど文章にならん
「重い疲れ」・・・オートバイモノとしては一番好きでm変わったことが起きるわけではもちろんなくて、ただただ描写がたまらないのか、そうかな。まあそうかもしれん。
「大きな恵み」・・マタドール、ピカドールと牛との対決。ただただ描写がたまらなく熱い
表題のアポロンの島ももちろん良いのですが、他のより若干長いから後回しでも良いだろうと思うし、あと海の声、貝の声、ナフプリオン、スイスにて、エリコ〜、動員時代あたりも好きで、あと書き忘れたがこの人は描写だけでなく、会話の部分もとても良くて、あの「生のさ中に」って本も好きです、はい
小川国夫という不思議な作家がどのように文学に取り組み、特異な小説群を生んできたきたのかは、彼自身の著作でかなり明らかにされています。しかし、この小川の同伴者、妻による小川国夫へのレクイエムは、その文学的な営為がどのような苦悩のうえになされたのかを、違った角度から照らし出しています。やや硬質な文章が、小川国夫とこの著者との関係を表しているように思えます。しかし、私にとって衝撃的であったのは、小川とその母との間柄、それにまた妻として著者がどのように関わってきたかの生々しい描写です。小川国夫の原点のひとつをかいまみる思いがしました。小川と著者との他のものを許さない密な結びつきと外面的な距離(坂ですれ違う国夫が著者を無視する!)との先鋭な対立も記憶に深く残ります。80歳になんなんとする著者の何とみずみずしい文章でしょうか。3.11後に小川国夫はまた新しい側面を見せてくれる予感がします。
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