「ラヴィン・ユー」は、1975年4月にビルボードのヒット・チャートでナンバー・ワンとなりました。5オクターブとも言われるミニー・リパートンの美しいハイ・トーン・ヴォイスが特徴の曲ですが、元々は彼女の子供たちに歌った子守り唄なのです。 スロー・バラードで、バックに小鳥のさえずりがずっと流れているもので、彼女の名前を一躍有名にした曲でした。R&Bという範疇を超えて万人に愛されるポップスで、その愛すべきバラードは、その後日本でもヒットし、今でもよく聴かれています。
この美しいメロディーを彼女はとても優しく慈しむように歌っています。良く聴けばとても難しいオクターブ以上の跳躍も難なく軽やかに歌いきっています。テクニックの凄さを感じさせないところに天性の歌姫の才能を感じました。甘さと温かみが内在する声質や、ハートフルだけれど、透明で可憐な歌唱がまた愛される所以でしょう。
スティーヴィー・ワンダーに見出されて、プロデュースされたこの「ラヴィン・ユー」は大ヒットしましたが、その4年後、31歳の時、乳癌のために鬼籍に入りました。2人の幼い子供を残しての旅だちです。歌いつづけていたら、ダイアナ・ロスを超えるような大歌手になっていたかも知れません。ミニー・リパートンの愛らしい歌声は今聴いても格別ですから。 「ラヴィン・ユー」は、30年以上経った今でもよく聴かれており、その透明でステキでキュートな歌声は、今もCDの中に息づいています。
「花〜Scenery with Floews〜 (DVD版)」のブルーレイ化作品で、内容は同じですが、高画質で楽しめるようになっています。
V-Musicシリーズの基本的なコンセプトが、音楽に映像を当ててBGVとして楽しめるようにしようというものなので、それ以上のものを期待してはいけません。図鑑的な情報はタイトル画面とポップアップメニューにしかなく、撮影地に関する情報もわずかですから。主役は音楽と考えたほうが良いでしょう。
もちろん、こういったコンセプトを理解した上であれば、いまのところ(2008年現在)、桜専門の作品を除けば、ほかにはない花にフィーチャーしたブルーレイのBGV、高画質で撮影された花々の映像を、心地よい音楽といっしょに楽しめるでしょう。内容としてはちょうど NHKで深夜に流しっぱなしになっている、ナレーションなしの音楽付き映像番組や、ニュースの合間に挿入されている季節の花の話題がたくさん集まったもの、を想像していただければよいかと思います。全般的に小粒な感じなので星は4つ。
1. 向日葵(ひまわり) → パッケージにも使われている一面のひまわり畑。比較的カットも少なく、雄大な景色をゆっくり楽しめます。
2. 花菖蒲 → 普通に菖蒲園で撮影した素材がベースなので、そう珍しいものでもなく。
3. 薔薇(ばら) → こちらも普通にバラ園で撮影した素材がベース。綺麗に撮影されていますが、並といえば並。
4. 桃 → かなり地味ですが、里山って感じで、これもこれもよいのはないかと。
5. 菜の花 →「1. 向日葵(ひまわり)」同様、風景に広がりがあって心地よいです。春が待ち遠しく感じます。
6. 紫陽花(あじさい) → 青空の下、雫に濡れた紫陽花というのもよいものです。ドビュッシーのアラベスクが妙にマッチしています。
7. チューリップ: オランダで撮影した素材も含まれているようですが、うーん、天気に恵まれなかったのか、カメラマンの腕が悪いのか、いまいちなカットが多いのが残念なところ。
8. 百合(ゆり): トビシマカンゾウ(ワスレグサ属)なので、一般的にはユリとは呼ばないと思うのですが。確かにユリ科だから広くいえばユリでしょうけど、普通に考えてユリといえば、ユリ属の花のことをいいますよね……。せっかく綺麗に頑張って咲いているのに、タイトルが「百合」では期待外れに思う人も少ないと思いますから、変えてほしいものです。
9. 彼岸花(ひがんばな): ひたすら彼岸花である点を除けば、「1. 向日葵(ひまわり)」や「5. 菜の花」のようにBGVとして風景を楽しめるトラック。特に最期のライトアップされた群生は、彼岸花という名前もあるでしょうが、怪しげな麗々しさがあって、なんともいえない美しさを感じます。
レビューは書けませんが、感想を書きます。
最近のテレビはミサイル、殺人、誘拐などクリニックの待合室には不適当な話題が多く放送されていると私は感じ、2週間前からこのDVDをリピートモードで使用し、待合室のプラズマテレビで患者様にご覧いただいています。はじめは、一度見たからいいとおっしゃる方も1,2名いらっしゃいました。最近はそのようなご意見は聞かれず、私が待合室を観察するとこのDVDの映像を食い入るように見ている人、感動のため息をつく人、笑顔になる人等々が散見されます。私はひまわり、チューリップなど息をのむすばらしい映像と音楽に感動しています。時にはこの撮影地はどこだろうなどと患者様との会話も弾みます。自動でリピートしてくれると設定が楽なので助かります。その点を考慮し1点減点の星4つとしました。
5オクターブに達すると言われる驚異の歌声。しかしその超高音域は決して曲芸じみたものではなく、美しく透明感のあるまさに「天使の歌声」そのもの。当時のライブ映像で、顔色ひとつ変えず自然に「あの声」で歌っている姿を観ることができます。彼女はまさに不世出の特別な歌い手。
スティーヴィー・ワンダーが彼女の才能にほれ込み、レコード会社との関係から偽名を使ってまでこのアルバムに参加。曲を書き、様々な楽器を演奏し、アレンジを施し、ジャケットの裏面に温かなメッセージまで載せている。…そこまでは知っていたのですが、先日BSで放映されたドキュメンタリーには、さらに心温まるエピソードがありました。
Lovin' Youを録音中、デモテープに偶然入っていた「鳥のさえずり」を入れようと思い立ったスティーヴィー、ミニーらは自らテープレコーダーを携えて公園へ。ミニーがあの高音で鳥たちに歌いかけると、鳥たちがそれに応えた。それを録ったものがあのLovin' You冒頭の鳥のさえずりなのだそうです。ミニーのご主人は「あのアルバムのレコーディングの日々は、まるで魔法にかかったような素晴らしい時間だった」と当時を回想していました。それから40年近く経った今でも、このアルバムを聴けばその魔法は誰にでも体験することができます。
美しい高音が印象的なミニー・リパートンがこんなにドラマチックな人生を歩んでいたなんて、知りませんでした。吉岡さんがラジオ番組で宣伝していたので、買ってみましたが、これを読んでもう一度曲を聴くと、彼女がどんな気持ちでさまざまな曲を歌っていたかがわかり、ますます心が動かされました。
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