若い世代にはピンとこないと思いますが、40代以降の人間にとって「日活ロマンポルノ」という言葉を聞くと、何だか甘酸っぱいものを感じざるをえません(笑)。1971年に白川和子の「団地妻シリーズ」を皮切りにおびただしい数の作品が生まれましたが、なかでも作品性が高いと言われているのが「女教師シリーズ」でこの作品が第1弾です。
永島暎子はいまでもテレビドラマで脇を固める女優ですが、一躍名前が知られるようになったのが1977年公開の本作品です。何とも悲しげな表情をたたえつつ、これでもかと不幸に祟られる「M的演技」は彼女の専売特許です。この作品でデビューの故・古尾谷雅人(当時の芸名は康雅)が悪の限りを尽くす不良中学生役として出ています。ほか、ロマンポルノの常連、江沢萌子のほか、樹木希林、久米明、穂積隆信、蟹江敬三などけっこう豪華な共演陣です。
作品としては確かにロマンポルノなのですが、情交シーンにしてもビールや砂などをモチーフ的に使うあたりは日活の映画マンのプライドを見る思いです。1960年代後半の新東宝をはじめとした「ピンク映画」ではスタッフの人数がせいぜい5、6人だったのに対し、日活では一般映画と変わらない最低20名単位で撮影に臨んでいたとか。AV世代にとっては何とも「もどかしい内容」ですが、当時の時代背景を含めてご覧になっていただきたいと思います。
関西圏では、公開当時に浜村淳氏が例によってラジオ番組で絶賛していたし、「陰に隠れた」ような、マイナーな印象の作品ではなかったのだが…。
(レンタル用のビデオソフトも、比較的流通していたと思う。たとえば『ブルークリスマス』の方が、本作品よりもずっと、中古ビデオ市場でレア物だった)
ついでに言えば、『新幹線大爆破』もまた、当時の国鉄から撮影への協力が得られたわけでもなく、公開当時には、ヒットしたとは言いがたい興行成績であった。その意味では、この『動脈列島』と大差は無い。
本作品と『新幹線大爆破』との違いとしては、『新幹線大爆破』が、ひかり号の走行シーンにミニチュア特撮を多用した(と言うか、国鉄の撮影協力が得られず、多用せざるを得なかった)のに対して、本作では特撮を廃し、よりリアルな映像になっている点が挙げられる。
たとえば、主人公が「スピード0の信号電波」を用いて新幹線車両を停止させる場面では、実際に新幹線と高速道路が間近で並走し、新幹線側がタイミングよく減速する場所を選んでロケを行っている。
また、クライマックスの、ブルドーザーを新幹線線路に落として列車を破壊しようとする犯人側と、阻止しようとする警察側との対決の場面では、実物のブルドーザーが線路のフェンスに肉迫するサスペンスフルな映像が展開する。
こうしたリアリティに加えて、いかにも増村保造監督らしい、主人公と捜査官との強烈な自我の対立を大胆に描いた演出の妙は、まさに傑作と呼ぶにふさわしいものと言える。
多くの方々に見ていただければと思う。
風采の上がらない男から2百万円で買い取ってくれと言われ羽振りのよかった主人公はそれを買い取る。
だがその1枚の罫線が、ひとりの株屋の運命を狂わせる…。
「こ、これは!………この不景気に、この罫線が大相場の到来を予言している。間違いないんや!」
しかし相場はピクとも動かなかった。そして、万策尽きて駒田の経営する弱小証券が廃業記者会見を行っているその時に、
「陰極まった相場は意外な出来事を呼ぶ」………。印象的なラストシーンで終わります。
印象的なラストシーンは圧巻!著者の作品でベスト3に入る力作
無償の情熱。人間の幸福。もろもろ、哲学・思想的な問題群を考えるに当たっても参考になる本。と同時に、抜群のストーリー・テラー。巻置くあたわず。
兜町は私の職場のある場所です。現在では株取引の多くがインターネット等による売買となり、証券取引所にも「場立」が無くなり、以前テレビで見ていたように株が急騰したとき、証券マンがひしめきあうように手サインで株を売買する姿が無くなったため、本書に載っているような兜町の活気はありません。本書は昭和30年代の岩戸景気を背景とした株人気に生きた一人の相場士を描いています。現在もそうですが当時は株の配当よりもキャピタルゲインを重視していたので、投資家達も相場士の動向に注目していたし、中小の地場証券が多くあったため、それらの証券会社が相場のスターを求めていたという背景がよく分かります。古き良き兜町に生きた一人の相場士のがむしゃらな生き様にすごく共感できました。
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