この本には、旧日本海軍の明治時代に活躍した巡洋艦(半動力半帆船の艦もあり)、重巡洋艦、軽巡洋艦、特務艦(輸送艦、運送艦、標的艦など)の写真が掲載されています。前三者に関しては、どの艦も最低一枚は写真があったと思いますがが、特務艦は数が多いため、写真がないものもあります。個人的には状態の良い写真が多く、艦の詳細な部分まで見ることが出来るので、いい本だと思いますが、巻末にある「要目・艦歴一覧」に改装を実施した艦の改装後のデータが載っていない、最上級重巡洋艦の主砲換装後の写真が少ない、などがあるため星四つの評価です。しかし、興味のある方は購入して損は無いと思います。
まず見つけたら確保しておく書物です。 どうやら出版社のサイトを見る限り「絶版扱い」らしいです。
さて、本書ですが旧海軍の巡洋艦に関して学ぶ上で必要なことが一通り書かれています。 外観、機関、火砲等の武装、その他の装備品などが図説入りで分かりやすく解説されており初級者から上級者までの幅広い層が納得のいく内容になっています。
実は著者の森恒夫氏は日本の艦船プラモデルに創生期から関わっていた伝説の人物です。 日本模型(ニチモ)で艦船模型の設計に長く携われた後、収拾した資料を基に氏独自の視点で分かりやすく解説した『軍艦雑記帳 上・下』を田宮模型から発売しています。 その冊子は未だに艦船模型モデラーの間でバイブル扱いされています。 その冊子のイラストと詳細図説入りというスタイルを本書でも継続して用いたことがこのシリーズを成功に導いた原点と言っても過言ではありません。
森氏は本書の後、ライフワークとして同シリーズで『日本の駆逐艦』を手がけますが志し半ばにして鬼籍に入られ、彼の友人、知人が彼の志しを引き継ぎ『日本の航空母艦『日本の戦艦 上・下』にて事業を完結させるに至りました。
一見して華がある本では無い上に決して低価格ではありませんが、その中の情報量は他の追随を許しません。見かけたならばとりあえず確保して損はない本書と本シリーズはそんな本です。
第2次大戦中良く使われていた巡洋艦とはどのようなもので、どのように使われたかを知りたくて巡洋艦入門というタイトルに引かれて購入した。
しかし実際読んでみると、外国の巡洋艦についても日本の巡洋艦との比較という形で紹介されているが、事実上日本の巡洋艦についての解説と見たほうが良い。本書の最後のページを見ると、単行本で出版された当初のタイトルは「連合艦隊巡洋艦」と記されているがそのほうが内容にあったタイトルだと思う。
とはいうものの、日本の巡洋艦についてであれば全般的に良く情報がまとめられており、日本の巡洋艦についての入門としても良いだろうと思える。
ただし、単なるハードウェアとしての説明や戦記的記録を集めたような内容が目につき、著者が当時の巡洋艦を含めた海軍全般について本当に理解しているのか疑わしく感じる点もある。
一例を挙げれば、艦隊旗艦としての役割を担うことを求められ、また実際戦艦を率いて旗艦として使われた高雄型は、具体的に戦艦よりもどういう点が旗艦として優れていたのか一切説明はない。また高雄の巨大な艦橋の理由を近代兵器の出現が戦術を複雑にし機能的な指揮所が必要になったからだとしているが、それでは諸外国において同様のものがなく、それどころか、巨大な艦橋を実戦向きではないとして批判していたことをどう考えるのか?諸外国では近代兵器を巡洋艦に導入せず、戦術も単純で機能的な指揮所が不要だったから艦橋は小さいままであったとでも言うのだろうか?
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