ブレハッチが来日したときにコンサートに行ったが、そのときの演奏と比較するとコンクールの演奏の方が出来が悪いと思う。コンクールの緊張のせいか、ミスタッチがいくつかあるのと、弾き方が雑になっている。オーケストラも迫力がない。
コンクールの演奏は彼の資質を証明するには十分な演奏だったことは認めるが、繰り返し聴こうと思うレベルではない。しかし、日本で聴いたブレハッチの演奏は完璧だった。完璧すぎた。一度それを聴いてしまったがゆえに、コンクールの演奏に対して厳しい評価になってしまうが、それは致し方ないと思っている。
ブレハッチを聴いていると心が癒される。DVDで彼が弾いている姿を見ながら聴くと、一層幸せな気持ちになる。一音一音に心がこもった丁寧な演奏、オーバーなアクションが一切なく、ひたすら彼の音楽を伝えようとする気持ちが伝わってくるよう。ふと泣けてくることもあるが、そんな時間をくれるブレハッチにただただ感謝したい。彼のこの柔らかな響きで、他の作曲家を弾いたら、どんな感じになるのだろう。モーツアルトなんかも弾くようになるのだろうか?想像するだけでわくわくする。
ブレハッチのピアノはとにかく美しい。純粋で清らかで柔らかく深みのある音。オケより出すぎず、一体となって、しかしピアノの存在をクリアに印象づける。どれだけ早いパッセージでも音が塊にならず、一音一音に魂がこもっている。DVDで彼の運指を見て、その丁寧さに感激した。この手だからこんな心のこもった音がでるんですね。かつ彼の気品あるでしゃぱらない態度が、さらに音楽そのものの美しさを強調する。先日来日中のブレハッチの同じ曲を生で見た。(オケはロシアナショナル管弦楽団)さらにこの曲を自分のものとし、オケと一体、というより、オケがピアノに惹きつけられて音が透明になっていくような印象を持った。すばらしいピアニストだ。
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