沖縄に旅行に行ったことのある人なら、必ず滞在中に耳にしているのでは?
とても落ち着きます。
東宝映画が衰退期にイギリスのハマー・フィルムを参考に新趣向として怪奇映画路線を企画。特に製作者だった田中文雄が「吸血鬼ドラキュラ」(57年製作)に影響を受けたらしいが、公開当時(70年作)見事ヒットを飛ばした本作は”血を吸う”シリーズとして2本連作されている。 <以後シリーズは1作目と色合いを変え、岸田森を起用して和製ドラキュラと評判を取った「呪いの館 血を吸う眼」(71)、「血を吸う薔薇」(74)の2本である。>
婚約者の夕子(小林夕岐子)を訪ねて行ったまま消息不明となった兄・和彦(中村敦夫)を探す為 圭子(松尾嘉代)と恋人の浩(中尾彬)は、夕子の住む野々村家を訪れる。が、夕子の母・志津(南風洋子)によると夕子は半月前に交通事故で死んでおり、和彦も4日前に帰ったと言う。しかし、二人は夕子の墓参りの際 和彦の血塗れのカフスボタンを発見、そこで車の故障を偽装し、屋敷に泊めて貰い秘かに調査を開始する...。
激しい雷雨の夜...山中に孤立した屋敷...怪しい住人...幻影とすすり泣く声...不意打ちによる襲撃...冒頭からおどろおどろしい怪奇ムードの漂う中、唐突に展開されるショッカー演出が効果的。序盤は夕子が死人か、幽霊なのか、病気か、狂人なのか、謎的存在である所が面白い。 物語が展開するに従って役場の職員、夕子の死亡診断書を書いた医師・山口(宇佐美淳也)、墓堀り人夫等が野々村家に纏わる災いを語りだし、呪われた家の様相が赤裸々になってくる...。首を切られた烏の死骸から、軈て首を掻き切られた人間の死体が転がる異常光景に移行していく猟奇的な視覚効果も上手い。
夕子を演じた小林夕岐子の怪演振りが素晴らしい。マネキンの様な無表情の蒼白い顔から、真っ白な能面の様な顔、更に金色の眼が輝き薄気味悪い笑みを浮かべる光景は、例えば「リング」(98)の貞子の様に終盤まで姿を見せない焦らし効果では無く、神出鬼没に出現させながら奇怪で不気味な、そして幻想的な変身変化姿を映し出す事により、心底「ゾゾッ〜!?」とさせる怖さがある。(然も、殺人的美貌、妖艶な微笑み、まさに死美人。) 個人的には、ウルトラセブン 第9話「アンドロイド0指令」のアンドロイド少女 ゼロワン役で印象的だった女優である。
野々村家の下男、源蔵(高品格)のキャラも強烈だ。発話障害者(耳は聴こえる)で、志津の命令には従順な和製イゴール的怪人である。来訪者に敵意むき出し、観察癖、覗き趣味あり、不意打ち奇襲攻撃を得意とする。手斧を振り回す超危険人物である。怪奇映画らしい素敵な末路が用意されている。
首の片側に裂傷の傷跡が残る志津(南風洋子)の常に冷静で気丈な振る舞い、冷淡な薄笑い、和服姿が実に似合う不思議な魅力。山口医師(宇佐美淳也)は終盤、曲者振りを本領発揮、催眠術と拳銃使い、ラストの顛末は衝撃的。
圭子(松尾嘉代)と浩(中尾彬)のカップルが若々しい(笑)。中尾と高品の三度に渡るバトル場面は見応えあり、松尾嘉代に至ってはミニスカート姿が似合う典型的なホラー映画美人かな...演技も可愛いです(笑)。
本作はエドガー・アラン・ポーの怪奇小説「ヴァルドマール氏の死の真相」を下敷きに、又 楳図かずおの怪奇漫画諸作品からイメージを構築したという。そして欧米怪奇映画からも部分的な影響も見受けられる。ヒッチコックの「サイコ」(60)を彷彿させる場面展開もある。
日本独特の怪談色とスラッシャー映画風味を加味した凝った映像が巧みである。今や、「リング」や「呪怨」のオカルト女殺人鬼の先駆的な作品とも言えるでしょう。微量だが、効果的なスプラッター場面も展開される直截的残酷描写あり。 但し、本作の”首切り魔”夕子は果たして吸血鬼だったであろうか...それは、本作を観た人ぞ、知る答えであろう。
中尾彬は筆が立つ。グルメで料理上手。旅行好きで絵描き。焼き物もやる。もちろん俳優なのだが。奥さんとの相性もぴったり。チョーうらやまし。
私はこういう好き勝手に生きている人間のエッセーを読むのが好きだ。歳をとるにしたがって難しい本からは遠ざかっていく。
ただし、数学関係は例外なんだけど、なんでだろぉ〜♪
|