刑事の立場を悪用して悪事に走る刑事の末路を描くサスペンス作品。
本書に多くのページが割かれているのは手形詐欺であり、経済小説としての要素が強く感じる。 しかし、残念なことに手形詐欺についての説明に力を入れすぎて、主人公の刑事がいかに悪の道へと転落していくかの心理描写が物足りなくなってしまった。 それでもラストのどんでん返しに驚愕すること間違いなし。 まさしくタイトルの「裏切りの明日」そのもの。
工藤栄一監督、萩原健一主演でVシネマ化されたが、こちらは原作の持つ経済小説の要素は皆無で、暴力刑事の自滅を中心に描いたバイオレンス作品に仕上がっている。 興味のある方はどうぞ。裏切りの明日 [VHS]
監督・野村、撮影・川又、主演・渥美による傑作コメディ・ボックス、発表年は拝啓天皇陛下様が1963年、64年の続編、1968年白昼堂々、69年のでっかい、となり、それぞれが「男はつらいよ」スタート以前のコメディアン渥美清の代表作、いずればら売りされることを期待します、64年には「拝啓総理大臣様」という作品も同じメンバーで発表されているがまだDVD化されていない、
どの作品も雅趣に富んだ味わい深いものばかりで所有する楽しみがあります、比較するのもおかしいですが4作とも男はつらいよのアベレージ作品をはるかにこえる仕上がりであり、寅二郎役の渥美しか知らずに見たときの新鮮さはとても大きなものだとおもいます、
野村芳太郎は1970年初頭までの20年ほどはコメディとメロドラマを掛け持ちしたプロフェッショナル中のプロ、名人カメラマン川又と生涯の名コンビ、評者は日本のクリント・イーストウッドと称えたいとおもう、74年の砂の器以降は日本を代表するサスペンス作家として引退まで活躍した、
私はここで「拝啓天皇陛下様」の喜劇ではなく戦争映画としての面白さを特に指摘したい、ワイド・スクリーンを縦横無尽につかった左右の広がりと奥行きの深さ、年齢からすれば実際に従軍を経験者したスタッフの指導下、戦中を知る役者たちがその中を行軍したり戦闘するさまはまさに戦争映画の王道中の王道、とりわけ野外演習から昭和天皇が行幸するシーンは感動的です、キューブリック「スパルタカス」に完全に伍している素晴らしいスペクタル度の仕上がりをみてどうして松竹は野村監督に戦争映画を撮らせなかったのか不思議でならない、実現すれば素晴らしいものになったろうにと残念です、
1975年、松竹が当時ヒットした歌謡曲にかけて製作した作品ですが、中身は刑事事件を取り巻く兄妹の愛憎劇です。何しろ脚本は新藤兼人、撮影は川又昂(新宿の繁華街や安アパート群の中を走り回るカメラが素晴らしい!)ですから、作品の格が違います!鈴木瑞穂の平刑事がいいです!松本清張の作品と共に、野村芳太郎監督の代表作だと思います。当時31歳の高橋英樹が若々しく、今とは全く別人ですが、当時20歳だった初々しい秋吉久美子との近親相姦的な関係が非常にリアルでした。お勧めの作品です!
ヴェトナム戦争以前のヴェトナムを舞台に各勢力が入り乱れる、という、一言で言えばそーゆーハードボイルド小説。その各勢力というのが、実際、ちゃんといくつも割り振れるぐらい混沌とした当時のヴェトナムを舞台にした時点で、ほとんど勝ったも同然。
結城昌治の日本推理作家協会賞受賞作「夜の終わる時」。 本書は単なるミステリの範疇を超えて、良質な「物語」である。2部構成となっているのも成功している。読んでいるうちに物語の中に身を置き、本当にドギマギしてきた。おすすめです。 この頃のミステリは「日本のミステリの礎を創るんだ」という意気込みが凄く著作からあふれている。作者の志がすごく反映されているのであろう。未読の皆さん、昭和30年代後半からのミステリ作品に触れてみてはいかがでしょうか。(本作は昭和38年発表)全然古臭くありません。
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