特に遠藤郁子の演奏に限ったことではないが、ショパンの前奏曲は全曲通して聴くと、まるでひとつの長い曲であるかのような気がしてくる。少なからず、前奏曲を演奏しているピアニストの方々は、そんな気持ちで弾いているのではなかろうか。もちろん、全ての前奏曲を美しく弾いてくれることが前提だが。遠藤郁子はそれができている。
シューベルトの連作歌曲集「冬の旅」も古くは近藤朔風の日本語訳で幅広い世代ばかりでなく、クラシック音楽といった垣根を越えて歌われていたものだった。現在の状況をみると、ドイツ歌曲ばかりでなくイタリア民謡やイタリア歌曲の世界でも日本語訳から言語歌唱が当たり前となっている。それはある意味で歌の世界を国際的にするのには役立っていると思う。しかし、そのことによってクラシック音楽と普段関わりのない人を遠ざけたばかりではなく、童謡とまでいかなくても子供たちから歌曲の世界を大きく遠ざける結果となってしまっている。また、クラシック音楽と深く関わりのある人たちでも、歌曲やオペラを敬遠する人も少なくない。振り返ると小生も中学校時代に聴いたシューベルトの歌曲に感動してクラシック音楽の世界に足を踏み入れたことを思い出す。今から約40年前ですら、言語歌唱が当たり前になっていた。 このCDは作詞家の松本隆さんがシューベルトの連作歌曲集「冬の旅」全24曲に日本語の訳詞をつけたもので、歌唱はイタリア留学時代に数多くの国際コンクールの入賞歴を持ち、高音域の歌唱も余裕を持ってこなし日本歌曲の歌唱でも高い評価を得ているテノールの五郎部俊朗さん,ピアノ伴奏はテノールのエルンスト・へフリガーなどの有名な世界的歌手との共演も数多くこなされている岡田知子さんが努めている。演奏は、松本隆さんの日本語訳詞が原曲の意味を損なわずに、なおかつ日本語として自然な感じに付けられているために違和感がない。テノールの五郎部俊朗さんの歌唱も、日本歌曲を得意としていることもあって語り口は巧みであり自然である。岡田知子さんのピアノ伴奏も基本的にはドイツ語の原曲歌唱と同じスタンスだが、五郎部俊朗さんの歌唱に寄り添い日本語によるシューベルト演奏の成功に大きく寄与している。
とにかくブドウ糖不足するので購入。 個別に包装されているので安心です。
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