こんなマニアックな特集があって良いのか!と驚き、嬉しくなってしまいます。
そう言う意味では貴重な本であり、「この本を出した」と言うだけで既に評価に値します。
内容的には、「カークに関するデータ(アルバム、楽器、メンバーetc)を出来る限り集め、それを体系的に整理した本」と言う印象です。
多分、著者としては、「〜を体系的に整理した結果、そこから見えて来る事象を通じて、カークの姿を浮き彫りにする」と言うのが狙いなんでしょうが、正直、「そこから見えて来るもの」については、いささか食い足りない感じです。
ただ、もの凄く熱意と根気をもってデータの収集解析を行ってるのは伝わって来るので、その点は買いたいですね。
このミュージシャンほど「現代に生まれてくれば良かったのに」と思う人はいません。CDで音だけ聞いてると普通のコンボジャズなのに、映像で見るとまさに一人ビッグバンド!!。3本サックス+フルート+リコーダー+ホイッスル+本人の叫び&スキャット!。そうか!こんな演奏だったのか!。あまりに先鋭すぎて理解されにくかったのもうなずける。アメリカではジャズはもう古くなりつつあって、彼のようない「とんがったジャズ」はヨーロッパにしか活路がなかったのか?、。3本のサックスを見事に操り、すばらしいハーモニーを奏でている。1本のサックスにはセロハンテープ?で固定したキーが見られたり、2本のサックスを片手で操作したり、彼の創意工夫が見て取れる。ビバップをとうに追い越し、マイルスやコルトレーンさえも自分の音楽のほんのエッセンスに使いつつ、出来る事のすべてを出し切り、しかもユーモアもたっぷり含んでいる。ああ、目の前で見たかった!。
円熟の境地、というのは、こういうことをいうのであろう。 これまで、ローランド・カークが経てきた音楽が、このアルバムには全方位的に展開している。 ジャズ、ブルーズ、R&B、バード、トレーン・・・カークの中に深く根ざした全ての要素が、 さながら万華鏡のように、強い輝きを放つ断片となって、ここにギッシリ詰め込まれている。
原点回帰のようにシンプルに奏される、テナーサックスのソロが、もう何といっても良い。 ポップな「マスカレード」。ただでさえ甘い曲をストリングス付きの8ビートで演奏する。 なのに、このソウルフルで深みのあるサウンド。ああ、何度聴いてもかっこ良いなあ! ラテン風味8ビートの「チュニジアの夜」にはびっくり。しかしソロはトレーンを思わせるハードコア。 ボーカル入り「シュガー」やコーラス入りの「ブライト・モーメンツ」に溢れるブラックフィーリング。 「ステッピン・イントゥ・ビューティ」「クリスマスソング」で聴かせる、優しいヒューマニティ。 ライブの3曲で聴かせる、カークならではのサックス複数同時演奏や鼻フルートなどの超絶技巧も、 かつては盛り上げのための濫用や悪ノリに過ぎたりした事も多かったが、 ここでは、ただの装飾ではなく、ちゃんと音楽的な力を伴って配された演奏になっている。
ここに、アトランティック時代のような、刺激的で先鋭的、時に狂騒的、強烈な叫びのようなものはない。 しかし、耳に心地よく、時にポップで聴きやすくなりながら、それでもなお深く自分の音楽を表現し切っている。 聴いても聴いても枯れない音楽の滋養が溢れている。これぞ、達人の境地だろう。大傑作だと思う。 この録音の後、カークは倒れ、右半身麻痺になる。 そういう意味でも、これは万全の状態のカーク最後の集大成的アルバムとも言える。
ワーナー移籍第1作目の『天才ローランド・カークの復活』も同時発売。こっちはテナー演奏が特に素晴らしい。 併せて、オススメである。
Kirkのこの時期の作品は、Jazzというカテゴリーを越えていると思います。 American Black Musicと表現するのが、ピッタリです。
そしてKirkの音が、素晴らしい!1本で吹いたときの音は、ほんとにいい音。
でも、ストレッチ、マンゼロなんかと複数のリードを吹くイメージから、ゲテモノ扱いされていますが、本当に音や、タンギング、循環呼吸など信じがたい演奏です。 以前は、VHSで、この時期の映像がありましたが、今は、おそらくこれしかありません。 皆さん、是非一度見てください。
このアルバムについてはもう今更あれこれいう必要は無いでしょう。
とても星5つじゃ足りないアルバム。
どうしても好きになれない人はスムース・ジャズでも聴いていてください。
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