最初に、瀬川ことび氏がファンタジー・ジュブナイルの大家 瀬川貴次氏(Amazonでは37件がヒット)だとは気がつきませんでした。 妖怪好きでホラーとファンタジーの両分野で活躍する瀬川氏なら、当然時代伝奇物が接点になるわけですね。しかし、皆が食い散らかした後の平安ではなく、時代を室町に設定したのは大正解かもしれません。たとえば、足利義教は天魔王と称して犬追い物など呪術をよくしたようですし(明石散人『二人の天魔王』)、とにかく室町は面白い。 瀬川さんの描く妖怪はユーモラスで、私は好きです。たとえば、『厄落とし』の「初心者のための能楽鑑賞」に出てくる能の妖怪とか、味があっていいですね...
近藤ようこは、説教節をモチーフにした作品をコンスタントに発表してきたが、本書『妖霊星』は、その最高傑作だと思う。 控えめなセリフや描線の書き込み、静的なカットが、絵物語のような不思議な味わいを出している。
なお本書は分裂騒動以前の旧青林堂から刊行されていたものの、新装改訂版である。 同じく再刊された『水鏡奇譚』(こちらも傑作)ともども楽しみたい。
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